2021年03月01日公開
2021年03月01日更新
歯付き座金の特徴と使い方!菊座金のネジのゆるみ止めについて解説
歯付き座金とは、菊座金とも呼ばれる座金の一種です。平座金の内側や外側にギザギザな歯がついているような形状が特徴で、平座金と同じ使い方で高いゆるみ止めやガタツキ防止の効果が得られます。今回は歯付き座金について解説していきます。
歯付き座金(菊座金)とは?
歯付き座金とは菊座金やロックワッシャー、スターワッシャーとも呼ばれる座金の一種です。日本工業規格 JIS B 1251に詳細な規定があり、主にゆるみ止めやガタツキ防止用の座金として使用されています。
国内では平和発條株式会社や大陽ステンレススプリング株式会社、株式会社オチアイなどのメーカーが製作しています。
歯付き座金の特徴
歯付き座金の特徴は、その形状にあります。座金の内側や外側についた歯が母材やボルトに食い込む時に生まれる反力や、先端部の食い込みにより、ボルトの回り止めやゆるみ止めの効果が得られます。比較的小径のボルトに使用されます。
同様の使い方をするばね座金よりも厚みが薄く、平座金よりも若干厚い程度ですので、ボルト選定に大きな影響を与えません。
外径は平座金とほぼ同じで、母材に対して面圧を低くし陥没を防止することによるゆるみ止めの効果もあります。また面での摩擦係数を上げることにより、回転緩みを防止するという効果も期待できます。
ザグリ穴径や他の部品への干渉も、平座金とほぼ同様で設計ミスのリスクを減らせますが、完全に同じではないので注意が必要です。
ホームセンターでも販売されているため、入手は比較的簡単です。JIS規格で規定されており、品質にバラツキが少ないのも特徴です。
歯付き座金の用途
歯付き座金は、主にゆるみ止めやボルトの回り止め、ガタツキ防止に使用されます。厚みが薄く均一に保たれやすいことから、ボルトに精密な直角が求められる場所やねじ山に余裕がない場所、裏から止めることが不可能な場所の回り止めなどで、ばね座金の代用品としても使用されます。
内歯形は止めねじや美観が求められる場所など、歯が外側に出ると不都合な場合に使われます。外歯形は内歯形よりもゆるみ止め性能が高いので、より強いゆるみ止めが必要な場所で使われます。
内外歯形は内歯形と外歯形の両方の特徴を兼ね備えているため、最も強いゆるみ止めの効果が得られます。皿形は皿小ねじに使われ、歯が皿ザグリ部に食い込むことでゆるみを防ぎます。
使用箇所は建築土木分野や精密機器、自動車やバイク、電気機械や太陽光発電の盤の取り付け、自動販売機の据え付けなどにも使われています。
また塗装面やメッキされた部品や母材に食い込む性質を利用することもあります。大型バイクの車軸部に使用し、歯の部分で金属部品の塗膜などをはがすことで、ランプなどを点灯させるための通電性を持たせている車種もあります。同様に、通電性を利用して電気製品や自動車部品のアース端子を固定する際に用いられます。
歯付き座金の規格
歯付き座金は日本工業規格 JIS B 1251に規定があり、大きく4つの形状に分けることができます。英語表記のtoothed washerの頭文字を取りTWと略記されることもあります。
JISで規定されている材質は鋼とりん青銅ですが、ステンレス製も流通しています。市販されているほとんどの歯付き座金はこれらの材質です。表面処理は生地、酸化クロメートメッキやニッケルメッキなどです。
形状は歯が内側にある内歯形、外側にある外歯形、内外にある内外歯形、皿状の皿形の4種類です。内歯形と外歯形、内外歯形は一般的なボルトに使われます。皿形は皿小ねじのザグリ部用です。呼び径によって違いますが、7~16箇所の歯がついています。
内歯形はM3~M24が、外歯形はM2~M24が、内外歯形はM4~M116が、皿形はM3~M8がJISで規定されています。市販されている歯付き座金も、ほぼこの範囲内のものです。
歯付き座金使用方法
歯付き座金の使い方は平座金と同様です。ボルトの傘と母材の間に入れて適正なトルクで締め込んで使います。ここではその原理や構造も見ていきます。
歯付き座金原理、構造
歯付き座金のゆるみ止めの原理は、座金の外側か内側、あるいはその両方についた歯を使ってゆるみ止めの効果を発揮します。
内歯形は座金の内側に歯がついており、この歯がねじ部や母材に食い込むことでボルトの回転を防止し、ボルト固定の効果が得られます。
外歯形は座金の外側に歯がついていて、この歯が母材やボルト傘に発生する反力や食い込みでゆるみを防止します。
内外歯形はこの両方の原理でゆるみ止め効果を生み出します。歯付き座金の中では最も強いゆるみ止めの効果があります。
皿形は座金の外側に歯があり、皿小ねじが回転して緩む際、皿ザグリ面に食い込むことでゆるみ止めの効果を発揮します。
歯付き座金使用上の注意点
歯付き座金は歯を母材やボルトに食い込ませることでゆるみ止めとすることから、母材に傷がつきます。そのため、傷をつけてはいけない場所や頻繁に付け外しする場所には向きません。
外歯形や内外歯形はボルトを締め付けると歯が外側に見えてしまいます。外周部や見える場所に傷をつけたくない場合は、内歯形を使用します。
市販されている呼び径や材質は、ほぼJIS規格の範囲内です。規格外のサイズを使用したい時には、別の方法を考える必要があります。
内歯形と外歯形には表裏があり、母材側に歯を向けます。特に通電性を持たせたい時には、逆にすると効果が発揮できなくなりますので、注意が必要です。
ホームセンターなどでも入手できますが、取り扱いされているサイズや材質が少ないこともあります。
まとめ
歯付き座金は様々な場所で使われている座金です。そのメリットとデメリットを理解して使えば、比較的安価で強いゆるみ止め効果が期待できるでしょう。