止め輪の種類・特徴・使い方を解説

止め輪とは、対象物の穴や軸に加工した溝にはめ込むことによって、隣接する部品を固定する工具です。止め輪の種類には大きく偏心型止め輪とスパイラル止め輪、そして同心型止め輪があります。今回はそれらを種類別に分け、止め輪の特徴や注意点、取り付け方などを解説します。

止め輪の種類・特徴・使い方を解説のイメージ

目次

  1. 1止め輪とは?
  2. 2止め輪の種類・特徴・使い方
  3. 3止め輪の使い方
  4. 4止め輪を選ぶときの注意点
  5. 5ねじ・ナット・止め輪でお困りの際はツルタボルトがおすすめ!
  6. 6まとめ

止め輪とは?

止め輪とは、リテーニングリング、サークリップ、スナップリングなどと呼ばれています。穴または軸に加工した溝にはめて、隣接した部品が抜けたり動いたりしないように固定するファスナーの一種で、溝からはみ出している板幅部分によって、部品の固定を可能としています。

止め輪はリングとも呼びますが、一般家庭にあるさまざまな電化製品、家具などにも使われている製品です。材質はステンレスや鉄で出来ているものが大半で、寸法は製品によって異なります。

なかには取り外しがしやすいように、ラグが付いているものやスラスト方向で使用できるもの、ラジアル方向で取り付けるものなどがあり、使用する目的に合わせて形状などが工夫されているのが特徴です。

Cリング、Eリングという名称は、それぞれアルファベットのCやEの形状をしていて、溝加工した軸へはめ込んで、部品が抜けるのを防ぐために使用します。スナップリングは、軸にはめた部品が動くのを制御するために取り付ける部品です。

止め輪のメリットは、部品ひとつあたりに必要な材料が少なくてすむこと、製品全体の軽量化を図れること、止め輪をはめ込む溝を穴や軸に加工するだけでよいため、廃棄物や生産コストを削減できることです。

材質については、炭素鋼(カーボンスプリングスチール)製が一般的で、耐食性や硬度などの要件によっては、ステンレス鋼、ベリリウム銅、インコネル製といったものが使用されています。

また、表面処理については、保存期間を長くし、耐食性を高める目的で、『リン酸塩皮膜処理』『六価クロム皮膜処理』『三価クロム皮膜処理』『その他のコーティング』の大きく4種類の表面処理方法があります。

止め輪の用途

止め輪は、ベアリングや軸が軸方向に抜けないようにするため、軸や軸受の縁に溝を切って、その溝にはめるリング状のものです。

スナップリングは、ばね用鋼でできていて、弾力を利用して溝には簡単にはめることができます。止め輪の材質は、一般的には炭素鋼(カーボンスプリングスチール)製ですが、耐食性のものや、目的によってはステンレス鋼、ベリリウム銅、インコネル製のものが使用されます。
 

止め輪の種類・特徴・使い方

止め輪には大きくの以下の3種類に分けられます。それぞれについて解説します。
・偏心型止め輪
・同心型止め輪
・スパイラルリング(巻き止め輪)
 

偏心型止め輪

偏心型止め輪とは、板幅が先端部に向かって細くなっているタイプで、装着時は溝壁と先端のギャップ部を除き、全ての面で接触しています。偏心型止め輪には大きく以下の4つの種類に分けられますが、それぞれについて解説します。

・スラスト方向取り付けタイプ
・ラジアル方向取り付けタイプ
・溝加工不要タイプ
・ベベル型・湾曲型止め輪
 

スラスト方向取り付けタイプ

穴および軸に加工した溝に平行して取り付けるタイプです。先端のラグ部が「留め」として機能して固定力を高めています。

ラジアル方向取り付けタイプ

軸に加工した溝に垂直方向に取り付けるタイプで、低荷重用に使用します。スラスト方向取り付けタイプよりも安価で、製品によってはスラスト方向取り付けタイプの代替品として使用することもできます。

溝加工不要タイプ

溝を加工する必要がなく取り付けることができるタイプで、対応荷重は低く、一度取り付けると取り外すことは困難です。

ベベル型・湾曲型止め輪

ベベル型止め輪は、止め輪外周部または内周部に15度からなる角度が加工されれています。止め輪がはめ込む溝に対応する角度を加工し、止め輪が溝にぴったりとはまります。固定部品との間に隙間ができず、固定部品が軸方向へと動くいわゆる「あそび」の発生を防止し、それに伴う騒音や振動などを防ぐことができます。

同心型止め輪

同心型止め輪は、どの面でも板幅が一定となっているのが特徴で、装着時には止め輪が楕円形になり、溝壁と3点で接触しています。ラグ部は存在せず、構成部位にスペースを確保できますが、その分偏心型止め輪に比べ固定力は劣ります。また、偏心型止め輪と比べて単価は低くなります。

スパイラルリング(巻き止め輪)

スパイラルリングは、360度全ての面で溝壁と接触していて、巻数を変えることで軽荷重から重荷重と幅広く条件に対応できます。プレス加工とは異なり、板状鋼線をコイリングする生産方法のため、プレス加工品のようなバリが発生しなりというメリットがあります。

また、金型を設計する必要がないため、金型設計費用がかかりません。
プレス加工に比べると、生産過程での材料に無駄がなく、サイズ、材質によってはコストをかなり削減することができます。C型止め輪のようなラグ部がないため、構成部位のスペース確保に最適です。

スパイラルリングには、単巻タイプ、二重巻きタイプ、多重タイプの3種類のタイプがあります。

 

C型止め輪

C型止め輪は、一般的な偏心型止め輪の種類のひとつで、その偏心型止め輪の中のスラスト方向(軸部に対して180度方向)に取り付けるタイプです。

C型止め輪の特徴

ベアリングなどの対象物にスラスト方向に抜けないように穴に溝を入れているリング状の止め輪で、溝加工が必要です。

C型止め輪の使い方

C型止め輪は、一般的に専用のプライヤーで縮めたり伸ばしたりして挿入します。また、止め輪の再使用はできません。

 

丸型止め輪

丸型止め輪は、一般的な偏心型止め輪の種類のひとつで、スラスト方向に取り付けるタイプです。

丸形止め輪の特徴

クリアランス内径が穴用(軸用)とC形止め輪に比べて小さく、対象物への干渉が少なく、溝への接触面積が少ないため、スラスト荷重が3分の2程度で、溝加工が必要です。

丸型止め輪の使い方

丸型止め輪はC型止め輪と同じで、一般的に専用のプライヤーで縮めたり伸ばしたりして挿入します。また、止め輪の再使用はできません。

ベベル型穴用止め輪

ベベル型穴用止め輪は、一般的な偏心型止め輪の種類のひとつで、スラスト方向へ取り付けるタイプです。

ベベル型穴用止め輪の特徴

溝位置の加工精度や、対象物のガタツキを抑えることが出来ます。15度に傾斜していて、止める溝も15度に傾斜する必要があり、溝加工が必要です。

ベベル型穴用止め輪の使い方

ベベル型穴用止め輪はC型止め輪と同じで、一般的に専用のプライヤーで縮めたり伸ばしたりして挿入します。また、止め輪の再使用はできません。

E型止め輪

E型止め輪は偏心型止め輪の種類のひとつで、対象の軸に溝加工し、ラジアル方向(軸部に対して90度方向)に取り付けるタイプです。

E型止め輪の特徴

弓E形止め輪は、バネ性を持っていて横からみると弓状になっていますが、その形状を利用して保持部品と隙間をなくします。

E型止め輪の注意点

止め輪の選定は、軸径と溝径の両方を確認して使用します。また、止め輪の再使用はできません。

クリセント形止め輪

クリセント形止め輪は偏心型止め輪の種類のひとつで、対象の軸に溝加工し、ラジアル方向に取り付けるタイプです。

クリセント形止め輪の特徴

外径が小さいため、狭いスペースでの使用が可能な止め輪で、外径に制約がある場合に有効です。

クリセント形止め輪の注意点

止め輪の選定は、軸径と溝径の両方を確認して使用します。また、止め輪の再使用はできません。

U形・K形止め輪

U形・K形止め輪は偏心型止め輪の種類のひとつで、対象の軸に溝加工し、ラジアル方向に取り付けるタイプです。

U形・K形止め輪の特徴

溝に接触する部分が多いため、E形止め輪に比べスラスト荷重が高く、ドライバーなどの工具で簡単に取り外しができる止め輪です。

U形・K形止め輪の注意点

止め輪の選定は、軸径と溝径の両方を確認して使用します。また、止め輪の再使用はできません。

プッシュナット

プッシュナットは偏心型止め輪の種類のひとつで、対象の軸に溝加工する必要がないタイプです。

プッシュナットの特徴

軸にスラスト方向から挿入することで、対象物に止め輪の爪が食い込んで抜けない構造になっています。溝加工する必要がなく、自由な位置で固定することが可能です。他の止め輪と比べると、スラスト荷重が大きくなります。

プッシュナットの注意点

対象物の修理やメンテナンスを行う場合、製品を変形させて外すため、再利用することができません。また、爪が変形して対象物に固定できない恐れがあるため、挿入時に製品の爪に器具がかからないように挿入します。

CS形止め輪・CR形止め輪

CS形止め輪・CR形止め輪は偏心型止め輪の種類のひとつで、対象の軸に溝加工する必要がないタイプです。

CS形止め輪・CR形止め輪の特徴

プッシュナットに比べると、挿入力が低く相手軸を傷つけにくい形状となっています。プッシュナットよりも外径が小さく、スラスト荷重が小さくなります。

CS形止め輪・CR形止め輪の注意点

相手物が硬い時や、硬い被膜ができる表面処理(ニッケルメッキやクロムメッキなど)が施されている場合、止め輪と相手物の硬度さがなくなり相手物に爪が食い込まなくなるため、スラスト荷重が低下してしまいます。

丸形スピードナット

丸形スピードナットは偏心型止め輪の種類のひとつで、対象の軸に溝加工する必要がないタイプです。

丸形スピードナットの特徴

スライド荷重は、プッシュナットとCS形止め輪の中間となりますが、CS型止め輪と比べ爪が長いので、挿入したときの芯のずれがありません。丸形スピードナットは、軸用のみで使用します。

丸形スピードナットの注意点

対象物でメンテナンスなどを行う場合、その対象物から外す時に製品を変形させてしまいますから、製品の再利用はできません。

P形スピードナット

P形スピードナットは偏心型止め輪の種類のひとつで、対象の軸に溝加工する必要がないタイプです。

P形スピードナットの特徴

全体を弓状に湾曲することでバネ作用を持たせ、対象物を押さえつけ、ガタがない状態で締結させることができます。このタイプも軸用のみの使用になります。

P形スピードナットの注意点

指が抜けなくなると非常に危険ですから、軸用の製品には絶対に指を入れないようにします。

キャップナットF形

キャップナットF形は偏心型止め輪の種類のひとつで、対象の軸に溝加工する必要がないタイプです。

キャップナットF形の特徴

スラスト荷重は、プッシュナットとCS形止め輪の中間となります。CS形止め輪に比べると爪が長いため、挿入時の芯のずれがなく、軸用のみの使用になります。相手軸の端面を保護することで、軸端面の引掛け事故を防止します。装飾用に用いられています。

キャップナットF形の注意点

相手物の抜け防止が目的であり、相手物への予圧(相手物を常に抑え込む力)は発生していません。ただし、P形スピードナットは相手物を抑え込む力が発生します。

キャップナットD形

キャップナットD形は偏心型止め輪の種類のひとつで、対象の軸に溝加工する必要がないタイプです。

キャップナットD形の特徴

全体を弓状に湾曲させることで、バネ作用を持たせ、対象物を押さえつけた状態対で挿入することができます。このタイプも軸用のみの使用となります。相手軸の端面を保護することで、軸端面の引掛け事故を防止します。プッシュナットとキャップの複合製品で、装飾用に使われます。

キャップナットD形の注意点

正しく挿入した場合に比べスラスト荷重が低下するため、相手物へ挿入するときは、斜めに挿入しないようにします。

グリップ形止め輪

グリップ形止め輪は偏心型止め輪の種類のひとつで、対象の軸に溝加工する必要がないタイプです。

グリップ形止め輪のグリップ形止め輪特徴

全体を弓状に湾曲させることで、バネ作用を持たせ、対象物を抑えつけた状態で挿入でき、止め輪のグルップ力で固定します。この止め輪は軸用のみに使用します。

グリップ形止め輪の注意点

爪を変形させないために、相手物への挿入は製品の爪んに挿入器具がかからないように挿入します。

止め輪を軸に挿入する時に広げすぎると永久変形が大きくなり、スラスト荷重が低下します。止め輪と相手軸との摩擦力を利用しているため、相手軸の仕様によりスラスト荷重が変化します。
 

同心止め輪

同心止め輪はどの面をとっても板幅が一定となっていて、装着時は止め輪が楕円形となります。

同心止め輪の特徴

リム幅が全周同じ幅となっていて、ラグ部がなく、スリムな止め輪です。内径と外径の中心が同じタイプの止め輪です。偏心型止め輪に比べて単価は安くなります。

同心止め輪の注意点

溝壁と3点で接触し、ラグ部が存在しないため、構成部位にスペースを確保できますが、その分固定力が劣ります。

止め輪の使い方

止め輪は、一般的に専用のプライヤーで縮めたり伸ばしたりして挿入します。また、溝加工不要型の種類では、簡単な工具で取り付けることが可能です。

止め輪自体が、簡単には外れないような構造になっていますから、スナッププライヤーなどの専用工具以外で強引に止め輪を脱着するのは避けたほうがいいでしょう。

 

止め輪を選ぶときの注意点

止め輪は、対象の製品の用途によって、それぞれに相応しい種類の止め輪を使用する必要があります。また、止め輪のサイズも製品により異なり、細かく区別されていますから、事前に調べて適切な選択をする必要があります。

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まとめ

今回は、止め輪とはどんなものなのか、その用途や種類、使い方などについて解説しました。

止め輪の種類には、偏心型止め輪、同心型止め輪、スパイラルリング(巻き止め輪)といったものがありますが、それぞれの種類によって、注意点などもありますから、事前に調べておく必要があります。

また、輪止めのサイズは製品によって異なり、細かく分かれていますから注意しましょう。

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