ハードロックナットの緩み止めの仕組み/寸法/締め方

様々な分野で利用されているボルトとナットによる締結ですが、最大の敵は緩みです。振動などで緩ませないよう様々な機構を持った部品や締結方法が開発されていますが、その一つがハードロックナットです。今回はハードロックナットの原理や使用方法を解説していきます。

ハードロックナットの緩み止めの仕組み/寸法/締め方のイメージ

目次

  1. 1ハードロックナットとは?
  2. 2ハードロックナットの原理、構造
  3. 3ハードロックナットの使用方法
  4. 4まとめ

ハードロックナットとは?

ハードロックナットとは日本のハードロック工業株式会社が特許を持つ、緩み止めに特化したナットです。

凸ナットと凹ナットをセットで使用し、緩み止め性能の高さや施工性の良さは国際的に高く評価されています。材質は鉄やステンレスといった金属製のため、摩耗しづらく繰り返し使用可能です。

ハードロックナットの特徴

ハードロックナットの特徴は、優れた緩み止め機能にあります。米国NAS(National Aerospace Standard)航空規格をパスした緩み止め性能を持ち、様々な分野で活用されています。

形状は凸ナットと凹ナットの2つでボルトを締付ける仕組みになっています。ボルトの寸法と設置スペースを通常のナットよりも少し長めに設計するだけで、ボルト自体への追加工は不要です。

また、脱着に特別な工具は必要なく、通常の六角ナット用と同じ工具が使用可能です。

ハードロックナットの用途

ハードロックナットは様々な分野で利用されています。

高層建築では東京スカイツリーや東京ドーム、大阪駅などの柱や梁などの各部締結や筋交いのターンバックルなどにも使われています。

土木建築分野では明石海峡大橋など長大橋の橋梁部や高速道路のジョイント部に、また新幹線の台車取付部やサスペンション、レール継ぎ目や鋼管柱のフランジ止め部などに使われています。

土木建築や鉄道車両だけでなく製鉄、高速道路、電力施設、鉱山、橋梁、鉄塔、自動車や船舶、産業機械などへの実績があり、意外なところでは楽器のドラムやボブスレーのソリなどにも採用されています。

ハードロックナットの規格

ハードロックナットは現在3種類あります。
 

  • ベーシックのリム付きタイプ(HLN-R)
  • ベーシックの標準タイプ(HLN)
  • ベーシックの薄型タイプ(HLN-ウス)

ナットの種類によって少し違いますが、サイズはM4~M30まであります。

材質はSS400又はこれに準ずる強度と性質の鋼材、S45C焼入焼戻材、SCM435焼入焼戻材、SUS304又はこれに準ずる強度と性質の鋼材とあります。

表面処理もSS400は電気亜鉛めっき、溶融亜鉛めっき、S45Cはリン酸マンガン処理となっています。SUS304は生地です。また規格外の特注品として、チタンや真鍮といった金属で制作することが可能です。

その他にもラインナップとしてベアリングナット、六角穴付き止めねじ(セットスクリュー)もあります。

ハードロックナットの原理、構造

ハードロックナットの緩み止め効果は、日本の建築技法である楔の原理で実現されています。楔は隙間にV字又は三角形の楔を打ち込み、隙間を埋め圧着させて固定させる手法です。

ハードロックナットは凹ナット側はボルト中心に対して真円なのに対し、凸ナットは偏芯して一部が厚くなっています。この寸法の差が重要で、厚くなっているところを真円のナットが締め込むことによって、まるで楔を打ち込んだようにボルトとナットが物理的に密着し、一体化することで緩み止めの効果を発揮します。

ハードロックナットとダブルナットの違い

一般的な緩み止めとして広く用いられている方法に、ダブルナットがあります。これは1本のボルトに2個のナットを使ってボルトを締結し、緩み止めの効果を持たせたものです。2つのナットを使うという点ではハードロックナットと同じですが、仕組みや締め方に大きな違いがあります。

ダブルナットは縦方向の圧力で緩み止めの力を出します。まず母材に近い下ナットを締結して、ボルトをしっかりと固定します。その後上ナットを下ナットよりも強い力で締付け、下ナットで受けていた締結力を上ナットで受け止めます。そうすることで下ナットは締結力から解放されます。

この後、上ナットを固定したまま下ナットを上ナット方向へと締め付けると、下ナットは上ナットとは逆の面で締結力を受けることになります。上下のナットで逆方向に絞るようにボルトを締め付けるため、緩み止めになるのです。

これに対してハードロックナットは凸ナットと凹ナットの厚み寸法の違いを利用して側面からボルトを押し付けて締め付けるため、横方向からの圧力で物理的にボルト山同士を密着させて緩み止めの効果を発揮します。

ハードロックナットの使用方法

ハードロックナットを取り付ける時は、まず締結物に通したボルトに凸ナットを取付けます。締め方は通常の六角ナットと同じで、一般的な工具を使って締め込みます。

その後、凹ナットを手でボルトに通し、凸ボルトの1山程度を残して取付けた後、指定のトルクで締付けます。ボルトの状態で上下のボルトが密着しない場合がありますが、緩み止め効果はしっかりと発揮されています。

ハードロックナットの使用上の注意点

ハードロックナットは再使用が可能ですが、凸ナット締結後に凹ナットを手締めした時点で、1山分以上の隙間が無い場合は緩み止め効果が低下している可能性があります。
このような場合は再使用せずに、新しいナットへ交換することをお勧めします。

また、凸ナットを締結力0もしくは極端に低いトルクで締結した場合に、凹ボルトを締め付ける際にはスパナ等で凸ナットを固定しないと、凸ボルトが共回りして、意図したトルクが変化する可能性があります。

ハードロックナットは、ねじ公差JIS2級(ISO6H)で製造されています。このためボルトの規格がJIS3級(ISO8g)の場合は公差が大きく、強い締結力が得られません。この場合はボルトを交換する必要があります。

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まとめ

ハードロックナットは国際規格をクリアする緩み止め性能と、通常のナットの施工性の良さを両立させたナットです。通常のナットより高価ですが、メンテナンスコストなどを考えた場合、トータルとしてコストダウンに繋がる場合があります。

ボルト用のハードロックナットだけではなく、ベアリング止め用のハードロックナットや六角穴付き止めねじと同じ規格で取り付けることができるボルトなどもあり、用途に応じて使い分けることができます。

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