ハイテンションボルトとは?寸法/規格/種類など

ハイテンションボルトは、普段はあまり目にすることがない鉄骨造の建物や橋の接合部などに多く使われており、名前が示す通り高い強度と引張力を持っています。この記事ではハイテンションボルトの特徴や用途、使用上の注意などを解説します。

ハイテンションボルトとは?寸法/規格/種類などのイメージ

目次

  1. 1ハイテンションボルトとは?
  2. 2ハイテンションボルトの種類や規格
  3. 3ハイテンションボルトの使用上の注意
  4. 4まとめ

ハイテンションボルトとは?

ハイテンションボルト2

ハイテンションボルトは、高力ボルト(こうりょくボルト)や高張力ボルト(こうちょうりょくボルト)、ハイテンボルトなどとも呼ばれ、高張力鋼(引張強度が490N/m㎡以上、1,000N/m㎡未満の鋼材で、1,000N/m㎡を超える鋼材は超高張力鋼と呼ばれます)で製造されたボルトです。

また、ハイテンションボルトは、ボルトの軸力(ボルトとナットで構造材を締め付けて使用する場合の,ボルトの軸方向に働く引張力)が均一になるように設計されています。

ハイテンションボルトの特徴

ハイテンションボルトの最大の特徴は、摩擦接合を用いて構造材の接合を行うことです。摩擦接合はハイテンションボルトの均一かつ強力な軸力が加えられた接合面全体が構造材などを保持する方法で、下記のようないくつかの利点があります。
 

  • ボルト穴の周辺が最も摩擦力が強く、ボルト穴が変形、欠損しにくいため構造材の破断が少ない。
  • 摩擦接合用高力六角ボルト、摩擦接合用高力六角ナット、摩擦接合用高力平座金を組み合わせることで、適切なボルト張力が得られるように製造管理されているため、安定した軸力が得られる。
  • 構造材の滑りやずれによるボルトに対しての、せん断力(ハサミのように、2つのものが反対方向へ動いて切る力)、支圧力(局所的な圧縮力)が発生しないため、ボルトの張力が変化せず、高い疲労強度が得られる。
  • 外力(外から加わる力)に対して構造材が滑りにくいため、接合部に高い剛性が得られる。

また、ハイテンションボルトを使用した摩擦接合の性能を高める工夫は、構造材にも施されています。
摩擦力は表面がザラザラしている方が高くなりますので、構造材の接合部はブラスト処理と呼ばれる表面処理を行ったり、表面の酸化防止被膜をわざと除去してサビを発生させるなどして、摩擦力を向上させています。

以上のようなさまざまな利点があることから、ハイテンションボルトを使用した摩擦接合は、多くの建築物の接合部に用いられています。

ハイテンションボルトの用途

ハイテンションボルトは主に鉄骨造の建物や橋などの建築物の接合部など、大きな応力がかかる箇所に使われています。
 

ハイテンションボルトの種類や規格

ハイテンションボルト2

ハイテンションボルトは施工方法や機能に合わせて大きく3種類に分けられます。記号ではF10Tと表記される高力六角ボルト、S10Tと表記されるトルシア形高力ボルト、F8Tと表記される溶融亜鉛メッキ高力ボルトです。

ハイテンションボルトの種類

高力六角ボルト

高力六角ボルトは、通常の六角ボルトとほぼ同じ形状のハイテンションボルトです。性能が十分に発揮できるように、JIS B 1186で「摩擦接合用高力六角ボルト、摩擦接合用高力六角ナット、摩擦接合用高力平座金」を組品(セット)で使用するように定められています。

高力六角ボルトは強い軸力を得るために、締め付けトルクは通常の六角ボルトよりも高いトルクで締め付けます。

例を挙げますと、S35C製のM16ボルトの場合は180Nmが規定の締め付けトルク値ですが、SNCM630製のハイテンションボルトは2倍の360Nmです。

締付け方法も独特で、1次締め、マーキング、本締めの3工程で行います。本締め前に接合面がより密接に接合するように、ボルトへ均等な所定トルクをかけて、ボルトと構造材が完全に密着するように1次締めを行います。

次のマーキングは1次締めを行った状態で、白いマジックを使い、構造材+座金+ナット+高力六角ボルト軸へ1本の線を引きます。これは次の本締めで、ナットがきちんと回転したかを確認するためです。

そして、規定トルク値の100%で本締めを行いますが、本締めには2つの方法から選べます。
 

  1. ナット回転法
  2. トルクコントロール法 

ナット回転法は、1次締めからナットを120度だけ回転させる単純な方法です。JISで規格されている「摩擦接合用高力六角ボルト、摩擦接合用高力六角ナット、摩擦接合用高力平座金」を組品で使用すれば、十分に性能が発揮されるという考え方です。

また、状態によるトルク係数値(締め付けるボルトの座面やねじ面の抵抗を示す数値で、接触面の状態により変化します)の違いにあまり影響を受けず、安定した軸力が得られます。しかも施工後は目視検査(目で見て確認する検査)で良いので、簡単に検査ができます。

一方でトルクコントロール法は,トルク(ナットを締める力)と軸力が同じであることを利用した方法ですが、締め付けトルクが一定でも摩擦の影響を受けて軸力に違いが出ます。

軸力測定器や電動トルクレンチなどを利用して正確なトルク測定を行えば、ほぼ正確に軸力を伝えることができますので、本締めの多くの場合はトルクコントロール法で行われます。

トルシア形高力ボルト

トルシア形高力ボルトは、高力六角ボルトの施工管理(トルクコントロール)の簡略化と施工精度(軸力コントロール)の向上を目的として開発、製造されました。

そのために高力六角ボルトに比べて施工管理が簡単かつ、安定した軸力が得られますので、現在では最も多く使用されているハイテンションボルトです。JISでは規格されておらず、国土交通大臣認定品が使用されます。

形状的な特徴は、頭部が丸く(半球形のような形状)、先端にはピンテールと呼ばれる突起が取り付けられており、性能的にもピンテールが簡単な施工管理と安定した軸力を生み出しています。

締付け方法は高力六角ボルトと同様に、1次締め、マーキング、本締めの3工程で行いますが、本締めの際にナットを回転させずに、ピンテールにトルクレンチをセットしてボルトを回転(締め付け)させます。

ピンテールは、締め付けに必要なトルクが伝えられると破断する構造になっているため、締め付けトルクを測定する必要がなく、施工管理が簡単で軸力が安定しているという訳です。
 

溶融亜鉛メッキ高力ボルト

溶融亜鉛メッキ高力ボルトは、表面に溶融亜鉛メッキを施した高力ボルトです。溶融亜鉛メッキは錆止め効果が高いため、多くの場合は屋外や外部に露出する構造材(同様に亜鉛メッキされた鋼材など)に対して使用します。

溶融亜鉛メッキ高力ボルトもトルシア形高力ボルトと同様にJISでは規格されておらず、国土交通大臣認定品が使用されています。

また、形状や締め付け方法は高力六角ボルトと同様ですが、強度が低いため、特にせん断耐力が大きい構造材に使用する場合は注意が必要です。

ハイテンションボルトの規格

ハイテンションボルトは呼び径M12からM30、長さは首下50mmから250mmほどまであり、全ねじと不完全ねじ(ボルト先端の25mmから45mmほどのところまでしか、ねじ山が切っていないもの)があります。

先にも少し触れましたが、それぞれにF8TやF10T、S10Tなどの記号が表記されています。
これは高力ボルトの等級を意味しており、8や10の数字は引張強度を表しています。

F10Tの高力六角ボルト場合は引張強度が1000N/m㎡ということです。一般構造用鋼材SS400の引張強度が400N/m㎡ですので、高力ボルトはかなり強靭な材質でできています。
 

ハイテンションボルトの使用上の注意

最も注意点すべき点は、1度使用した高力ボルトは、どのようなタイプ、施工方法であっても再使用してはいけません。

また、頭部が六角のハイテンションボルトと六角ナットは、対辺(六角二面幅)が通常六角ボルトナットよりも、ひとサイズ大きくなっていますので、工具の準備などには注意が必要です。

例)M16の場合、通常の六角ボルトは24mmですが、ハイテンションボルトは27mmです。
 

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まとめ

ハイテンションボルト3

この記事ではハイテンションボルトの特徴や用途、規格や使用上の注意点なども解説しました。普段はあまり目にすることがないハイテンションボルトですが、使用される場合には十分に検討することをおすすめします。

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