ノルトロックワッシャーの使い方とゆるみ止めの原理

ボルトの緩み止めには様々な方法があります。中でもノルトロックワッシャーは使い方が通常の平座金と同様で、とても簡単です。ボルト自体の軸力を利用して緩み止めの効果を発揮するので様々な場所に利用が可能です。ここではノルトロックワッシャーについて詳しく見ていきます。

ノルトロックワッシャーの使い方とゆるみ止めの原理のイメージ

目次

  1. 1ノルトロックワッシャーとは?
  2. 2ノルトロックワッシャーの原理、構造
  3. 3ノルトロックワッシャー使用方法
  4. 4まとめ

ノルトロックワッシャーとは?

ノルトロックワッシャーとは、スウェーデンのノルトロックグループ(NORD-LOCK GROUP)AB社および同社現地法人が製造販売する緩み止め用の平座金です。

全世界で使用されていますが、その製造はマットマルというスウェーデン北部の街のみで行われています。ノルトロックワッシャーそれぞれにレーザーで刻印されていて、そのコントロール番号からロットが特定できるのでトレーサビリティにも優れています。

ノルトロックワッシャーの特徴

ノルトロックワッシャーは2枚1組で構成されていて、細かい溝の掘られたリブ面と波状の大きな溝の掘られたカム面に分かれています。カム面同士を向き合わせて使用することにより、緩み止めの効果が得られる構造です。

使い方は一般の平座金と同様にとても簡単で、潤滑油を使用した箇所でも緩み止めの性能は変わりません。

ノルトロックワッシャーの緩み止め原理はボルトやナットに負荷を掛けないため、ボルトやナットだけではなく、ノルトロックワッシャー自体も再利用できます。

また高い耐食性を持ち、強度区分12.9 (ASTM A574)の高強度ボルトにも使用することができます。
 

ノルトロックワッシャーの用途

ノルトロックワッシャーは、緩み止めが必要な世界中の様々な場面で使用されています。

建築分野では東京スカイツリーの構造部や南極レーダードームの構造部、高速道路のトンネル内カメラの固定などの、緩みが許されず、且つメンテナンスが難しい場所に採用されています。

自動車分野ではトラクターやバイクの各部品、ラリーの競技用車両やオフロード用車のエンジン部など振動が激しく埃の多い場所に採用されています。

また、新幹線の車体といった高い振動がかかり続ける場所などにも多く採用され、そのどれもが、ボルトの緩みが大事故に繋がりかねない場所です。

採用される場所は、新幹線の駅舎や船舶のエンジン、風力発電の風車など大形の物だけでなく、エレキギターのジャック部やアーチェリーの照準器などの小さな物にも使用されています。

ノルトロックワッシャーの規格

ノルトロックワッシャーは大きく分けて3つの規格があります。

 

  • ノルトロックワッシャー(NL)
  • ノルトロックXシリーズワッシャー(NLX)
  • ノルトロックSCワッシャー(NLSC)

ベーシックモデルのノルトロックワッシャーに加え、ノルトロックXシリーズワッシャーは、ガスケットの痩せなどが原因で生じる非回転緩みにも対応した上級モデルです。
また、ノルトロックSCワッシャーは、建築用に特化したモデルです。

ノルトロックワッシャーとXシリーズには通常タイプと幅広タイプがあります。SCワッシャーは通常タイプのみです。

ノルトロックワッシャーの材質は鉄、ステンレス、耐食性ステンレス254 SMO、ALLOY C-276、ALLOY718があります。XシリーズとSCワッシャーは鉄製のみです。

この他にも予めボルトとセットされたノルトロックコンビボルトワッシャーや特注品のスペシャル品ワッシャー、ナットとセットされたホイールナットなどもあります。
 

ノルトロックワッシャーの原理、構造

ノルトロックワッシャーは2枚1組で効果を発揮する構造になっており、その原理は以下の通りです。

波状に溝が切られているカム面同士を向かい合わせ、細かな溝が放射状に刻まれているリブ面が両外面になるように組立てます。

リブ面が滑り止めの役割を果たし、母材とボルトをしっかり固定します。振動等で締まる方向に力が加わった場合は、カム面同士ががっちりと噛み合うことで固定の力が増します。

緩む方向に力が加わった場合、カム面に刻まれた傾斜を上る方向に回転します。この場合に重要になってくるのがカム面の溝の傾斜角とボルトに刻まれたネジのリード角の差です。

緩み方向に力が加わると2枚のワッシャの間が広がることで厚みが増しますが、ネジのリード角よりもカム面の溝の傾斜角の方が角度が大きいため、その分ボルトが引っ張り上げられて軸力が上昇し締め付け力が増します。

これは「ウェッジロック機構」と呼ばれ、ノルトロックワッシャーの重要な機構です。ノルトロックワッシャーはカムの噛み合わせと軸力の上昇という2つの物理的要素で緩み止めを実現している平座金です。

ノルトロックワッシャーと通常の座金との違い

ノルトロックワッシャーと平座金の形状はよく似ていますが、その用途に大きな違いがあります。

ノルトロックワッシャーのサイズや使われる場所は通常の平座金と同様ですので、平座金と同様の効果も期待できます。
しかし、ノルトロックワッシャーを採用する主な目的は緩み止め効果です。

平座金は軸力の分散や母材の陥没防止、穴径がボルトやナットに対して大きい場合に座面を安定させるために使用されます。

ノルトロックワッシャーも平座金と同様の効果を持っていますので、母材の状況によっては幅広タイプの採用も可能です。

ノルトロックワッシャー使用方法

タップ穴や座繰り穴に使用する場合は、ノルトロックワッシャーを締結物とボルトの間に入れて、通常の工具で意図したトルクで締め込んでいきます。

しかし、貫通穴の場合はナット側にもノルトロックワッシャーを使用しなければ緩み止めの効果を得ることはできません。

また、スタッドボルトと組み合わせる場合は、接着剤を使用しなくてもノルトロックワッシャーのみで緩みを防止することができます。

ノルトロックワッシャーの使用上の注意点

ノルトロックワッシャーにはいくつか使用できない場面があります。緩み止めの原理から、母材とノルトロックワッシャーの間に平座金やバネ座金等別の物を挟んでの使用は緩み止め効果が損なわれます。

また母材が、ノルトロックワッシャーよりも硬い場合や、木材やプラスチックなど極端に柔らかい場合、厚い被膜の塗装面など陥没や大きくなじむ箇所は、リブ面での固定力が低下しますので使用できません。

 

加えて、ボルトが軸力で保持されない場合、ベアリング構造などボルトとナットの間が滑ることを前提としている場合は緩み止め効果が発揮できません。

平座金よりも厚みがあり径も大きい場合があるので、座繰り穴に使用する際などは注意が必要です。また、下穴径が大きい場合や母材が柔らかい場合は幅広タイプを使用されることをお勧めします。



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まとめ

ノルトロックワッシャーは平座金と同様の施工性の良さを持ちながらも緩み止めには強い力を発揮するワッシャーです。塩害仕様など種類も多いため、他の緩み止めが使えないような場面でもその力を発揮し続けることでしょう。

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