2020年06月22日公開
2020年10月26日更新
ネジにプラスとマイナスがある理由はなぜ?違いや使い分け
ネジといえばプラスネジとマイナスネジの2つの種類があります。プラスネジはマイナスドライバーでも回すことができることから、現在はプラスネジのほうが多く使われています。今回はネジにプラスとマイナスがある理由、それぞれのネジの歴史や違いと使い分けについて解説します。

ネジのプラスとマイナスとは?
ネジにはプラスネジとマイナスネジがありますが、日本独自の呼び方です。正式にはプラスネジはフィリップスと呼ばれ、マイナスネジはフラットと呼ばれています。
ネジを回すために使うドライバーは太さの異なるものが何本かセットになっており、どの家庭にもワンセットはあるのではないでしょうか。しかし、その中でマイナスドライバーを使うことはほとんどありません。
一般的に使用されているネジのほとんどはプラスネジです。マイナスネジはごく一部の場所にしか使われていません。プラスネジとマイナスネジの使用の差はネジを使う場所の汚れやすさによって使い分けられています。
プラスネジ
歴史的にはマイナスネジの方が古く、プラスネジは後から開発されました。マイナスネジは元々、切り込みの溝を削ることで作ります。プラスネジは金型を使い、強い力で押し付け十字穴を成形するため手間がかかることからマイナスネジが主流でした。
プラスネジは1935年にアメリカ技術者であるヘンリー・F・フィリップスによって発明されました。ドライバーが滑らずに、しっかりと締め付けられることから評価が高まり世界中に広まったのです。そのため現在でも英語でプラスネジを「フィリップス」と呼ばれているのです。
プラスネジは自動車メーカーで広く使われるようになり、世界中に普及していきました。そしてこのプラスネジを日本に初めて持ち込んだのが、ホンダの創設者である本田宗一郎です。1952年にヨーロッパ視察を行った際に「これからはプラスネジの時代だ」と予見しました。
以降、プラスネジの導入によってそれまで手作業で行っていたネジ回しは機械化され、作業効率がグンと上がったのです。そして現在では、使われているネジの9割以上はプラスネジとなりました。
マイナスネジ
プラスネジの使用率は9割とされている中、マイナスネジの存在意義はどこにあるのかと疑問を感じるのではないでしょうか。
プラスネジは汚れが溝に詰まると取れにくいというデメリットがあります。本来のネジの役割は強く締め込むことで部材と締結することにあります。プラスネジはその役割をしっかり果たします。
しかし、一度溝に汚れが詰まる、さび付くなどになるとドライバーが入らなくなり二度と抜けない厄介なネジになってしまいます。
そのため、泥や水垢など汚れが詰まるようなことが想定される場所では、プラスネジよりも比較的簡単に汚れを掻きだすことができるマイナスネジを使用していることが多いそうです。
ただし、腕時計に限ってはマイナスネジを使用されることが多いです。腕時計が作られるようになった1920年代はプラスネジは誕生していないため、ヨーロッパを中心とした高級腕時計メーカーは職人達の手仕事で作られていました。
このことから高級感やイメージ、デザインの面で現在でもマイナスネジが腕時計には採用されることが多いのです。
プラスネジとマイナスネジの違い
プラスネジとマイナスネジの違いは、それぞれのメリット・デメリットを見ることでわかります。それぞれ一長一短です。
プラスネジのメリット・デメリット
メリット
- ドライバーとネジの溝がフィットするため強く締め込める
- ドライバーとネジの溝の接地面がずれにくいため、先端は電動ドライバーでも使用可。
デメリット
- ネジの溝に汚れが詰まりさび付くとドライバーの先端がネジの頭に入らなくなる
- サイズが合わないドライバーで無理に回すとネジの溝がつぶれ「ネジがなめた」状態になりやすくなる
マイナスネジのメリット・デメリット
メリット
- ネジの溝に汚れが詰まっても比較的簡単に取り除くことができる
- 水がかかっても溝に沿い外に流れ出ていく
デメリット
- ドライバーとネジの溝がずれやすいため回しにくい
- ネジを締める際に片手で締めにくいため両手がふさがってしまう
なぜプラスネジとマイナスネジがあるのか
そもそもプラスネジとマイナスネジとなぜ2種類のネジがあるのでしょうか。プラスネジは十字穴なのでマイナスネジとの汎用性があるはずです。
それぞれのネジが存在している理由はいくつかあります。
もともとマイナスネジが使われていた
ネジは前述のように、マイナスネジがプラスネジよりも先に誕生しています。マイナスネジよりも強く締めることができ、部材との締結も強固なプラスネジはマイナスネジがあったからこそ誕生しています。
プラスネジは強く締めることができ、作業効率もマイナスネジに比べ高いというメリットがある反面、汚れやゴミが詰まりやすいのがデメリットです。マイナスネジはゴミや汚れが詰まっても洗い流しやすいため、汚れがたまりやすい場所に使われていることが多いのです。
プラスとマイナスができた理由
現代ではプラスネジは当たり前に存在するものですが、開発以前は日本に限らず海外もマイナスネジしかありませんでした。マイナスネジはネジ頭に一文字の溝を削り出すだけで作れるので成形は非常に簡単です。
しかし締める際には部材に直角に押し付けながらドライバーを回さなければなりません。そのためエアードライバーなどを使用できず手作業で行う必要があります。
比べてプラスネジの効率性は高く、木材に締め付けるとその差は歴然です。しかしプラスネジには汚れがたまる、アンティーク家具など古いものには雰囲気が合わない、合わせずらいなどの欠点もあります。そのような場所はあえてマイナスネジを使用する選択もあるのです。
現在、ネジの生産率は9割がプラスネジ、1割がマイナスネジですが、マイナスネジにも活躍の場はまだまだあることから生産されているのです。
プラスネジとマイナスネジの使い分け
プラスネジとマイナスネジはそれぞれ使われる場面が異なります。それぞれが使われている場所について解説します。
プラスネジを使うもの
プラスネジはありとあらゆるものに使われています。家庭用電化製品やパソコン、車やバイク、トラック、飛行機などの乗り物や工場、構築物などプラスネジを使っていないものはないといえるほどではないでしょうか。
また、プラスネジは人間の体内で使われるために開発された骨で作られた骨ネジ、宇宙ロケットなどで採用されている軽くて丈夫な素材であるチタン製のネジなどもあります。
マイナスネジを使うもの
マイナスネジは生産率が1割と少ないものの、意外なところでしっかりとその役割を果たしています。
例えば一般家庭では、風呂場などの水回りや庭に置かれている屋外灯があります。また街中では電車の乗客の出入りするドアの足元部分だけはマイナスネジが使われています。
さらにミシンの針板部分にもマイナスネジが使われています。針板部分にプラスネジが使われていると、トラブルが生じてもドライバーを縦にさすことができません。そのためマイナスネジが採用されているのです。
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まとめ
ネジにプラスとマイナスがある理由、違いや使い分けについて解説しました。
- 正式にはプラスネジはフィリップスと呼ばれ、マイナスネジはフラットと呼ばれている。
- 歴史的にはマイナスネジの方が古く、プラスネジは後から開発された。
- 現在の生産率はプラスネジは9割、マイナスネジは1割である。
- プラスネジは強く締めることができるが、汚れによる錆びが詰まると外れにくくなる。
- マイナスネジは汚れやゴミ詰まりが取れやすいが、片手で回しにくい。