2020年08月05日公開
2020年10月19日更新
チタンボルトとは?強度・チタンの種類・自転車などの用途を解説
チタンボルトの材質であるチタンは軽くて強い金属で、重さあたりの強度は鉄の2倍、アルミの6倍もあります。チタンの用途には海上施設、道路標識、医療用などがありますが、自転車のフレームにも利用されています。今回は、そんなチタンボルトについて紹介します。

チタンボルトとは?
チタンボルトとは、軽くて強い金属であるチタンでできたボルトですが、そのチタンの質量は鉄とアルミの中間で鉄の60%ほどです。また、強度は炭素銅とほぼ同じで重さあたりの強度は鉄の2倍、アルミの6倍もあります。
チタン自体、金属として実用化されてまだ50年ですから、チタンボルトはこれからの新しいボルトだといえます。
チタンの外観は銀灰色で、比重は4.5、融点は1,812℃、沸点は3,285℃であり、遷移金属としては平均的な値の素材です。
チタンは、強度、軽さ、耐食性、耐燃性、環境性能、色彩といったものを備え、さまざまな分野で活用されています。しかし、金属チタンは精錬加工が難しく、費用がかかるため、大量には使われていないのが現状です。
チタンボルトの特徴
チタンは金属光沢を持ち、性質は科学的、物理的にジルコニウムに近く、酸化物である酸化チタンはとても安定した化合物です。チタンは白色顔料としても利用され、光触媒としての性質も兼ね備えています。
チタンは、酸化物が非常に安定して侵されにくく、空気中では空気に触れる表面が強力な酸化物で覆われていて、白金や金などの貴金属と同じように強い耐食性を持っています。
しかも、耐食性を持つ金属の中で、もっとも軽く安価な金属です。
チタンは酸や食塩水などに対し、耐食性が高く、少量の湿気がある場合は塩素系ガスとも反応しません。
そうしたことから、純チタンの場合接着性に劣りますが、逆に表面の汚れやゴミが付着しにくいという利点があります。
チタンは高温ではさまざまな元素と反応しやすく、鋳造や溶接には酸素と窒素を遮断する大掛かりな設備が必要なことから、製造が難しい要因のひとつとなっています。
チタンは炭素や窒素とも反応して、それぞれ炭化物や窒化物を作りますが、それらは超硬合金の添加物としても利用されています。
純度の高いチタンは無酸素空間で塑性に優れ、鋼と似た色合いの銀灰色の光沢を持っています。また、鉄鋼以上の強度を持ちながら、質量は鉄鋼の約55%と非常に軽いという特徴があります。
また、アルミニウムと比較すると、約60%重いのですが強度は約2倍あります。これらの特性からチタンはアルミニウムよりも金属疲労が起きにくいのですが、工具鋼などの鉄鋼材料には劣ります。
チタン製のネジの種類には、小ネジ、タッピングネジ、ボルト、ナット、リベットまで多種多用で使用されています。
チタンの表面に酸化チタン皮膜を形成させ、光の干渉と皮膜厚さによって、グレー、茶、赤、青、緑、黄色、ピンクなど、さまざまな色を出すことができます。
チタン製のネジ類は、材料のチタン色ですが、潤滑用にニッケル皮膜処理をしたものを使うと白っぽくなり、皮膜のないものだと黒っぽくなります。
チタンは表面に安定した不動態皮膜を酸化によって形成するため、耐食性にかなり優れますが、異なる金属が接触する面では電位差が生じます。
周囲が乾燥している場合は問題ありませんが、屋外で雨にさらされている場合は注意が必要です。チタン板にステンレスビスで止めている場合などは、チタンとステンレスではステンレスビスが電蝕によって腐食することがあります。
また、チタンをニッケル皮膜したものは、ニッケルの毒性があり、医療や食品などには利用できませんから注意が必要です。
チタンボルトの歴史
チタンの由来は、ギリシャ神話の巨人タイタンにちなんで名付けたといわれていますが、チタンが最初に発見されたときは、メナカナイトと呼ばれていました。
チタンが金属として存在することを始めて発見したのは、1791年にイギリスの聖職者であるグレガーでした。
グレガーは、コンウォール地方の海岸の砂浜から採取した磁性を帯びた黒色の砂鉄に鉄以外の酸化物を発見しました。その発見場所にちなんでメナカナイトと名付け、学術雑誌に投稿したのが、チタンが世に出た最初でした。
その4年後、1795年にドイツの科学者であるクラプロートがハンガリー産のルチル鉱石の大半にこれまで知られていなかった新しい金属の酸化物を発見しました。その時、その物質をギリシャ神話のタイタンにちなんで「チタン」と名付けました。
しかし、グレガーやクラプロートが発見したチタンは、チタンの酸化物を砂鉄やルチル鉱石の中から鉄などの酸化物と分離したというだけで、金属チタンをチタン酸化物から還元抽出したわけではありませんでした。
実際に金属チタンを抽出して、その性質を確認でき、金属チタンが工業的に利用できるようになったのが1950年ですから、発見から150年以上経っています。
チタンボルトの種類
チタンの種類には、純チタンとチタン合金の2種類がありますが、純チタンとチタン合金について、それぞれ以下に解説します。
チタンボルト①純チタン
工業用に使われる純チタンは、純度99.8%のもので、残りは不純物の場合もあります。その不純物は酸素と鉄であり、その量によってチタンの機械的性質が決まります。
純チタンボルトの特徴
純チタンは、硝酸のような酸化性の酸に強く、食塩水のような塩化水イオンに対しても強いという特徴があります。
また、微量の水分があれば、亜硫酸ガスや硫化水素に耐えられ、ほとんどの有機酸に対して優れた耐食性を持っています。ただ、アルカリに対しては万能ではありません。
純チタンボルトの強度
純チタンから作られるチタンボルトは、引張強さが270mpa~620mpaで、純鉄の標準的な引張強さである200mpaよりもレベルが高く、低炭素鋼の強さと同等です。
チタンボルト②チタン合金
チタン合金は、機械的性質を改良することを目的とし、純チタンに合金元素を加えて作ったものです。
チタン合金ボルトの特徴
チタン合金の主な用途は、航空機、化学プラント、スポーツ器具、医療器具などです。
チタン合金ボルトの強度
チタン合金は、優れた比強度、耐腐食性、生体適合性を持ち、機械的性質を向上させた合金や、チタンが持つ優れた耐腐食性をさらに向上させたものもあります。
しかし、基本的に耐食性では純チタンに劣ります。
チタンボルトの自転車などの用途
チタンは、海上施設や道路標識、発電所用復水器、医療用といった用途がありますが、チタンは肌に優しく、金属アレルギーを起こしにくいため、医療用として人工関節や歯茎のインプラントなどにも使われています。身近なものとしては、メガネのフレームにチタンを使用しています。
また、自転車のフレームにもチタンが使われています。自転車のフレームにはクロモリ、アルミニウム、カーボンの3つの素材が主流となっていますが、錆に強くて軽量な素材であるチタンの特性が、自転車にぴったりだということで使われるようになりました。
しかし、チタンが自転車のフレームの主流にならないのは、加工や切削がしにくく、製作に時間を要し、他の素材と比べると生産コストが高くなってしまうからです。
そんな中、剛性感はクロモリよりも強く、アルミやカーボンよりもバネのある走りが可能なチタンに注目されています。チタンフレームの自転車は一生ものと言われていますが、その根拠になるのが錆びないということです。
しかし、チタンは錆びなくても他の部分の部品が錆びる可能性がありますから、雨ざらししていいということではありません。
チタンが自転車に適していることは分かっていますが、加工や製作で手間がかかります。そのため、どうしても高価になってしまい、手軽に購入できるまでには至っていません。
日本とアメリカのチタンボルトの使い分け
アメリカなどでは、航空機に多く使われることから、強くて硬いチタン合金が利用されています。
工業用チタンの材料には、やわらかめの純チタンと硬いチタン合金がありますが、日本ではプラントなどで利用する場合、耐食性の高い純チタンが利用されています。
まとめ
今回は、チタンボルトについて紹介しましたが、チタンとはどんな金属でどんな歴史があるのか、またチタンの特徴や用途についてまとめました。
- チタンボルトとは、軽くて強い金属で出来たボルトであり、強度は炭素銅とほぼ同じで重さあたりの強度は鉄の2倍、アルミニウムの6倍もあります。
- チタンは金属光沢を持ち、性質は科学的、物理的にジルコニウムに近く、酸化物である酸化チタンはとても安定した化合物です。
- チタンの由来は、ギリシャ神話の巨人タイタンにちなんで名付けたといわれていますが、チタンが最初に発見されたときは、メナカナイトと呼ばれていました。
- チタンの種類には、純チタンとチタン合金の2種類があります
- 錆に強くて軽量な素材であるチタンの特性が自転車にぴったりだということで、自転車のフレームにもチタンが使われています。
- アメリカなどでは、航空機に多く使われることから、強くて硬いチタン合金が利用されていますが、日本ではプラントなどで利用する場合、耐食性の高い純チタンが多く使われています。