2020年05月19日公開
2020年10月21日更新
タッピングビスとは?種類と使い方
DIYで物を作るときメスねじ不要のタッピングビスとは何なのか気になるものですが、ワッシャーと一体型のボルト・ナットとは別物です。この記事ではタッピングビスとは何か、特徴や種類、クリップナットを含めた使い方、選ぶ際の注意点について解説します。参考にしてください。

タッピングビスとは?
タッピングビスとはらせん状の突起(ねじ山)があるねじです。英語でスクリュー(screw)やスクリュースレッド(screw thread)、フランス語でビス(vis)とも呼ばれ、おもな使用目的は2つの材料を動かないように固定する「締結」です。
- オスねじ(ボルト・おねじ・雄ねじ)
- メスねじ(ナット・めねじ・雌ねじ)
- ビス:オスねじのみ・メスねじ不要
ねじにはさまざまな種類がありますが、大きく分けると上記の3種類になります。外側にねじ山があるのがオスねじ、内側にねじ山があるのがメスねじ。オスねじとメスねじをセットで使うもの(ワッシャーと一体型もあり)以外に、メスねじを必要とせずオスねじだけで打ち込めるのがビスです。
- 木ねじ(もくねじ)
- タッピングビス
- ドリルビス
さらにメスねじ不要のビスは上記の3種類に大きく分けることができます。木材同士を固定するのが木ねじ、木材・薄鋼板・アルミニウム合金板(アルミ合金版)・樹脂板(プラスチック板)などをつなぐのがタッピングビス、ドリル(切り刃)状の先端になっていておもに鋼材などの金属同士を固定するのがドリルビスです。
また、木ねじの一種である万能ビスとコーススレッド、タッピングビスの一種であるドリリングタッピンねじ(軽天ねじ)もメスねじ不要のビスになります。さまざまあるメスねじ不要のビスの中でも、木材とそれ以外の材料をつなぐのに適しているのがタッピングビスです。タッピングねじ・タッピンねじとも呼ばれています。
タッピングビスの特徴
ワッシャーと一体型のボルト・ナットとは異なるタッピングビスには、メスねじ不要・カンタンに作業できる・DIYも可能・なかなか緩まない・取り外しは困難という5つの特徴があります。それぞれの特徴について詳しく解説します。
メスねじがなくても使える
そもそもタッピングビスのタップ(tap)には「押す・突く」という意味があり、「ねじ切り」用の工具の名前にもなっています。「ねじ切り」とは、オスねじに合うメスねじに相当するねじ山を作る作業のこと。「ねじ切り」用の工具であるタップを使ってねじを切る(ねじを立てる)ことを「タップを切る」(タップを立てる)ともいいます。
メスねじがなくても、またメスねじ相当のねじ山を作る「ねじ切り」をしなくても、材料に打ち込むだけで自ら「ねじ切り」をするのがタッピングビスです。つまりタッピングビスはメスねじ不要、オスねじのみで使うことができるビスということになります。
作業がカンタン
タッピングビスなどの「メスねじがなくても使えるビス」以外のオスねじは、メスねじとセットで使うか、もしくはタップを使って「ねじ切り」の作業をする必要があります。しかし、タッピングビスを含むメスねじ不要のビスは、メスねじが必要ないだけでなく、タップを使った「ねじ切り」の作業も不要です。
下穴さえ開けておけば、わざわざタップをそろえて「ねじ切り」をしなくていいため効率が良く、作業がカンタンということになります。
ちなみにタップという工具は繊細で折れやすく、「ねじ切り」の作業は慎重に行わなければいけません。材料に対して真っ直ぐにタップを立てなかったり、必要以上に力が強かったりするとタップはすぐに折れてしまいます。
ある程度の経験が必要となる難しい作業なので、タッピングビスを使えば「ねじ切り」の必要がないというのは初心者向けの大きなメリットの1つです。
DIYでも使える
「ねじ切り」をしなくていいので作業が楽になるタッピングビス。DIYで鉄板・アルミニウム合金・プラスチックなどの板材を固定したいときに使うことができます。ただ、タッピングビスの中にもさまざまな種類があり、それぞれねじ部の形状や適した相手材(固定する板材)が違うため、下穴を開ける際に注意が必要です。
板材に開ける下穴径(下穴の直径)の目安は、タッピングビスの種類や呼び径(ねじ部の太さ)・板材の種類や厚みによってミリ単位で異なります。
予め板材がカットされ、タッピングビスの下穴が開けられたキットを組み立てるだけなら初心者でもカンタンにできますが、すべてをDIYで行う際はポンチという工具でくぼみをつけ、電動ドライバーで正確に下穴を開ける作業が困難です。
タッピングビスはDIYでも使えますが、個人でやると仕上がりが汚くなりがちなのでできればプロに任せましょう。
緩みにくい
木材にくぎを打ち込むときは失敗しても取り外しやすいというメリットがありますが、正確に打ち込んでも時間が経つと緩みやすいところはデメリットです。くぎと比較すると、ねじはらせん上のねじ山がある分、全般的に緩みにくくなります。
さらにねじの中でもワッシャーと一体型のボルト・ナットよりしっかり固定されるのが、メスねじなしで「ねじ切り」も自分で行うビスです。木材同士なら木ねじ、金属同士ならドリルビスが適していますが、それ以外の組み合わせの板材をきつくつなぎたい場合はタッピングビスが最適ということになります。
取り外しし難い
細かい分類や板材などさまざまな条件によっても違いはありますが、大まかに緩みにくい順番をつけるとすると「くぎ→ワッシャーと一体型のボルト・ナット→ビス」になります。反対に取り外しやすいのは「ビス→ワッシャーと一体型のボルト・ナット→くぎ」という順番です。
つまりビスの一種であるタッピングビスは緩みにくい分、取り外し難いことになります。一度打ち込んだら変更することはできず、失敗してもやり直せません。それでもタッピングビスを取り外すと、板材を傷める可能性が高まります。固定度は非常に高いものの、その分、打ち込む際の正確性が求められるタッピングビス。やはりDIYで挑戦するには難易度が高いといえます。
タッピングビスの種類
これまではタッピングビスとは何なのかという全体的な特徴についてまとめてきましたが、タッピングビスそのものにも種類があります。大きく分けると1種A形・2種B0形・3種C0形・4種AB形の4種類。さらにみぞ付きの2種B1形・ガイド付きの2種B2形・みぞ付きの3種C1形・その他に分類可能です。
こうしたタッピングビスの種類ごとの特徴と適した相手材について解説します。
1種タッピングビス
タッピングビスの中でも一般的に普及しているのが1種A形です。ねじ部の形状としては、角度が60°のねじ山が先端まで続き、ねじ部の先端が45°±5°の角度で尖っていて、ピッチ(ねじ山とねじ山の間の距離)がタッピングビスの中で最も粗い(幅広い)という特徴があります。
尖った先端によって相手材に開ける穴の中心がわかりやすく、打ち込んだときの食いつきがいいところがメリットです。相手材としては厚さ1.2ミリ以下の薄鋼板、木材、木材の繊維を加圧・加熱成形したハードボード、石綿が適しています。
2種タッピングビス
2種B0形タッピングビスは1種A形タッピングビスと同じ60°のねじ山ですが、ねじ部の先端は尖っておらず、先端のねじ山2~2.5山分が先細りのテーパー状で、ピッチは1種A形より細かいという特徴があります。
相手材として適しているのは薄鋼板、厚さ5ミリ以下の厚鋼板、プラスチックなどの樹脂、非金属、エボナイトなどの硬質ゴムです。
3種タッピングビス
ワッシャーと一体型になっていることもあるボルト(オスねじ)・ナット(メスねじ)のオスねじのことを、一般的には「小ねじ」と呼びます。その小ねじは現在主流で国際的な「ISO規格」、1964年まで標準だった「旧JIS規格」、アメリカ・カナダ・イギリスで統一されている「ユニファイ規格」、イギリスの「ウィット規格」によって分類されていて、種類を見分けるポイントはねじ部の形状・呼び径・ピッチのサイズです。
さらに「ISO規格」と「旧JIS規格」は呼び径とピッチがミリで表された「メートルねじ」、「ユニファイ規格」と「ウィット規格」は呼び径とピッチがインチで表された「インチねじ」に分類され、「ISO規格」と「ウィット規格」はそれぞれピッチが標準的な「並目」(なみめ)とピッチが細かい「細目」(さいめ・ほそめ)に分かれています。
こうした小ねじの「並目」とピッチが同じで、タッピングビスの中では最もピッチが細かいのが3種C0形タッピングビスです。ねじ部の先端2.5~3山がテーパー状で、尖っていないタイプになります。相手材として適しているのは2種B0形より厚めの厚鋼版、構造用鋼、鋳造(ちゅうぞう)による金属製品の鋳物(いもの)、アルミニウム・銅・マグネシウムなどの非鉄鋳物です。
4種タッピングビス
4種AB形タッピングビスは一般的にはあまり普及していません。60°のねじ山が先端まであり、ねじ部の先端が45°±5°で尖っているという「ねじ部の形状」は1種A形と同じ、1種A形より細かいという「ピッチ」は2種B形と同じです。相手材は5ミリ以下の厚鋼板、樹脂、非金属、硬質ゴムに適しています。
2種タッピングビスみぞ付き
タッピングビスは大まかに1種A形・2種B形・3種C形・4種AB形という4つの系統に分かれていて、さらにそれぞれが細分化されています。2種B形の系列に属する2種B1形タッピングビスは、2種B0形タッピングビスと60°のねじ山・ねじ山2~2.5山分が先細りのテーパー・1種A形より細かいピッチというところまでまったく同じです。
違うのはねじ部の先端が円筒ではなく1/4カットされているという、みぞが付いているところ。このみぞが刃のように相手材を削り、削りカスを排出します。適した相手材は薄鋼板、厚さ5ミリ以下の厚鋼板、樹脂、硬質ゴムです。
2種ガイドつきタッピングビス
同じく2種B形の系列になりますが、ねじ部の先端に下穴へのガイドとなるねじ山のない部分が付いているのが2種BRP形タッピングビスです。おもにサッシ(窓)を取り付ける際に使われます。
3種タッピングビスみぞ付き
タッピングビスの中で一番ピッチが細かく、ねじ部の先端2.5~3山がテーパーというところまでは3種C0形タッピングビスと同じ。さらに、ねじ部の先端が1/4カットされ、みぞが付いている点は2種B1形タッピングビスと同じになっているのが3種C1形タッピングビスです。適した相手材は鋳物、非鉄鋳物、構造用鋼になります。
その他
4つの系統が細分化されたタッピングビスの種類は他にもありますが、代表的なものは上記で紹介したとおりです。また、頭部形状はメスねじやワッシャーと一体化することもできる一般的な小ねじと同様にさまざまあり、用途に応じて使い分けることになります。
さらにねじの胴部がタッピングビスのような円形ではなく、三角形(おにぎり形)になっているのがタップタイトです。タッピングビスのようにメスねじも「ねじ切り」も不要でセルフタップできますが、三角形というねじ胴部の形状により、ねじを打ち込みやすく緩みにくいところがメリットになります。
B・C・S・Pなど細分化されたタイプによっては、メスねじと一体化して使うことも可能です。
タッピングビスの使い方
さまざまな種類があるタッピングビスですが、一般的な使い方は下記のとおりです。
- 位置決め:ポンチでくぼみをつけ、中央にマーキング。
- 穴開け:ドリルで下穴を開ける。
- 皿ザグリ:皿頭ねじの場合、ドリルでねじ頭部用の穴を掘る。
- ねじの打ち込み:電動ドリルでねじを打ち込む。
使う道具はポンチと電動ドライバーです。電動ドライバーにはドリルドライバーとインパクトドライバーの2種類があり、基本的にドリルドライバーは穴開けとねじの打ち込み(柔らかい材料・短いねじ)、インパクトドライバーはねじの打ち込み(硬い材料・長いねじ)に向いています。いずれにしてもドリルやねじの頭部形状に適したビット(先端工具)を取り付けて使うという方法です。
例えばバイクのカウルのように薄くて裏に手が回らない場合は、クリップナットを使ってタッピングビスを打ち込むと緩みにくくなります。基本的にタッピングビスはメスねじも「ねじ切り」も必要としません。しかしクリップナットを使ったほうがいい場合もあり、タッピングビス用のクリップナットも販売されています。
タッピングビスを選ぶときの注意点
基本的にメスねじを使用しないビスの中でも、使用する相手材が木材同士の場合は木ねじ、10ミリ程度の厚みがある金属同士の場合はドリルビスが適しています。タッピングビスが適しているのはその中間です。タッピングビスの中でも4種AB形はあまり普及していないので、基本的には1種A形・2種B形・3種C形という3つの系統から選びます。
一般的な薄鋼板ならみぞなし、多少厚みのあるアルミニウム合金ならみぞ付きが目安です。なべ・皿・丸皿・トラス・バインドといったねじ頭部の形状と呼び径によって規格が決まっていますので、使用する相手材によって適した種類とサイズを選ぶようにしましょう。
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まとめ
タッピングビスとは何か、特徴・種類・選ぶときの注意点について解説しました。メスねじ不要で作業がカンタン、DIYも可能、緩みにくく取り外し難いという特徴があります。
- 1種A形:薄鋼板・木材・ハードボード・石綿
- 2種B0形:厚鋼板・樹脂・非金属・硬質ゴム
- 3種C0形:厚鋼版・構造用鋼・鋳物・非鉄鋳物
- 4種AB形:厚鋼板・樹脂・非金属・硬質ゴム
- 2種B1形:薄鋼板・厚鋼板・樹脂・硬質ゴム
- 2種BRP形:サッシ
- 3種C1形:鋳物・非鉄鋳物・構造用鋼
タッピングビスの種類によって適した相手材は上記のとおりです。必要な道具はポンチと電動ドライバー、場合によってはクリップナットを使います。ボルト・ナット・ワッシャーが一体となった小ねじと同じようなねじ頭部の形状があり、使うものによって種類とサイズを見極めることが大切です。
下穴を開ける作業を含め、正確にタッピングビスを打ち込むのは難しいためプロに依頼するほうが美しく仕上がります。