スペーサーとは?ホイールスペーサーなどの種類や用途を解説

主に製造業などでは欠かすことのできないスペーサーですが、業界以外の方は、あまり耳にすることがないかも知れません。今回の記事ではスペーサーの特徴や用途の他に、よく耳にするホイールスペーサーの説明や一般的なスペーサーとの違いなども解説していきます。

スペーサーとは?ホイールスペーサーなどの種類や用途を解説のイメージ

目次

  1. 1スペーサーとは?
  2. 2ホイールスペーサーなどスペーサーの種類
  3. 3ホイールスペーサーを使うメリットとデメリット
  4. 4まとめ

スペーサーとは?

ネジスペーサー

スペーサーとは、日本語では間座(あいざ、かんざ)と呼ばれ、一般的に構造物や機械類などの部品と部品の間に取り付けて空間や間隔を保ったり、調整する部品です。主に構造物や機械類などの高さや隙間、摺動部(しゅうどうぶ、こすりあって動く部分)の調整に用いられます。

ひとことで言いますと、スペーサーは何かの空間が必要なときに、部品同士などを離して配置するために使用する、意外と身近にある物です。

スペーサーの特徴

スペーサーの特徴としては用途が広く、使用される環境によって、さまざまな種類があることです。

広く普及している品物や大量生産される機器類に用いられるスペーサーには既製品や汎用品があります。しかし、特殊な機械類や複雑な構造の装置などの場合は、さまざまな形状や材質、必要な機能でオーダーメイドされるケースも少なくありません。

使用する目的や環境によりますが、材質は鉄やステンレス、アルミニウム、他には銅や真鍮、なかには樹脂や磁器(セラミック)製などもあり、ミクロン単位での表面仕上げやメッキ、熱処理などで表面加工されたものもあります。

また、必要な性能に応じて絶縁性(電気を通さない)や耐熱、耐摩耗性などの特性が付加されたものもあります。

スペーサーの用途

スペーサーは自動車や鉄道、車両、航空機、工作機械、圧縮機などの産業用機械や、各種製造プラントをはじめとした重化学工業、電子機器、電気機器、医療機器、食品機器など、さまざまな業界のいろいろな機械や装置などに使われています。

例えば、身近なところではパソコン内部の電子機器や基盤などのパーツを、ケース内へ多階層に配置したり、発熱する部品の周囲に空間を作って通風性を確保しています。

また、女性に根強い人気があるパールネックレスは、真珠玉に傷がつかないように、また装飾性を向上させるために真珠玉と玉の間にクッション材をはさんでいます。

ホイールスペーサーなどスペーサーの種類

スペーサーと呼ばれる部品は以下のものがあります。代表的なものをいくつか紹介します。

スペーサーとホイールスペーサーの違い

よく耳にするホイールスペーサーは自動車に使われるもので、スペーサーの種類のひとつです。次で詳しく解説します。

ホイールスペーサー

ホイールスペーサーとは、自動車のハブ(タイヤホイールを取り付けるボルトが出ている円形の部分)とタイヤホイールの間に取り付ける円盤状の部品です。

ホイールスペーサーには、ボルトを通す穴がいくつか空いていて、これらの穴にハブから出ているハブボルトを通し、その上からホイールを取り付けてナットで締め付けます。

ホイールスペーサーを取り付けると、タイヤホイールがスペーサーの厚み寸法の分だけ車体の外側へオフセット(移動)しますので、車体の外装面(フェンダーの最も外側)とタイヤホイールの外装面を揃えてファッション性を高めたいときによく使用されます。

また、タイヤホイールがブレーキキャリパー(ブレーキをかけたときに、ブレーキディスクをはさみこむ役目をするブレーキパットを取り付ける部品)に干渉する場合にも使用されます。

ホイールスペーサーを取り付けると、ばね下重量(自動車のサスペンションが動く際に一緒に動く部品の総重量のことで、タイヤ、ホイール、ブレーキキャリパー、ブレーキディスク、ハブベアリング、サスペンションアームなどです)に含まれますので、燃費や加速、ハンドリングにも影響します。

従って強度と軽量性が求められますので、アルミニウム合金製が一般的ですが、レースなどで特に強度を必要とする場合は、ジュラルミンや超超ジュラルミンといった素材のホイールスペーサーが使われることもあります。
 

ネジスペーサー

ネジスペーサー

ネジスペーサーは、ネジとスペーサーの機能を合わせ持つスペーサーです。円筒や四角、多角柱形状のスペーサー部の両端に、ネジ部(オスねじ)やネジ穴(めねじ)、またはその両方が付いています。

取り付け時にレンチやスパナで回しやすいため、本体が六角形の六角スペーサーが多く使われています。ネジスペーサーは、両端のネジ部・ネジ穴の組み合わせで、雄ネジ雄ネジ、雌ネジ雌ネジ、雄ネジ雌ネジの大きく3種類に分けられ、連結させて長くすることも可能です。

使用法の例をあげます。部品同士を接触させずに、雄ネジ雌ネジスペーサーを使用して隙間を作って固定する場合です。部品Aには雄ネジがねじ込めるタップ穴を、部品Bには雌ネジへねじ込むボルトを貫通させる穴を開けておきます。

まず、雄ネジ雌ネジスペーサーの雄ネジ部を部品Aのタップ穴へねじ込んで固定します。次に部品Bを貫通させたボルトを雌ネジにねじ込み固定しますと、AとBの2つの部品は、スペーサー本体部寸法の隙間を空けて固定されます。

また、ネジスペーサーは、電子機器や制御装置などのプリント基板の取付け用として、基板同士や基板とケースとの接触防止などに広く使われています。絶縁性の材質で作られ、基板を保持しつつスペーサー部で隙間を確保し、ネジ部で固定、締結する機能を持ちます。

材質の多くは鉄やステンレス、アルミニウム、チタン、黄銅などの金属製ですが、その他には樹脂ではジュラコンやナイロン、FRP、プラスチック製もあります。

中空スペーサー

中空スペーサーはパイプスペサーとも呼ばれる円筒形状のスペーサーで、内部にネジ山がなく穴が空いているものです。多くの場合は回転する機械のシャフト(回転軸)などの、可動部や回転部に突き通して使用されます。

別の用途として、既製のネジスペーサーで対応できない長いサイズや短いサイズの部品が必要な場合に、目的の長さや形状のネジと中空スペーサーの組み合わせで、ネジスペーサーの代用品としても使用可能です。

材質は鉄やステンレス、アルミニウム、チタン、黄銅などの金属製の他に、樹脂や磁器(セラミック)、ゴム製、紙製などさまざまです。

また、現場施工で直前までスペーサーのサイズが決定できない場合などは、複数枚の平座金(ワッシャー)を中空スペーサーの代用品として準備しておけば、現場合わせの施工にも対応可能です。
 

シムスペーサー

シムスペーサーは、可動部などの作動によって隙間寸法が変化する場合に、隙間寸法の最大、最小値を決定したり、機械や装置などの高さや隙間、部品の間隔や位置の微調整など、隙間の寸法に高い精度や、高い機能性が求められる場合に使用されます。

部品や装置の間にはさんだまま固定する場合と、一時的にはさんで調整、固定した後に取り外す場合もあります。

寸法精度では、厚さ5ミクロン(1ミクロンは1mmの千分の1、0.005mm)のシムスペーサーも存在するほどの高精度で、機能面では耐磨耗性、耐熱性、密封性、耐薬品性、耐油性などさまざまな機能を持つものもあり、調整する部品の形状に合わせて、リング型、C型、プレート型、コの字型の4種類のシムスペーサーが一般的です。

主に円形や円筒形、パイプ状の部品に対してはリング型とC型が使用され、プレート型はリング型とC型で対応できない場合に使用される、最も使用範囲が広いシムスペーサーです。
またコの字型は、切り欠かれたコの字部はC型、方形部はプレート型として使用できる多機能なシムスペーサーです。

その他にも、機械や装置、部品に合わせたさまざまな形状のシムスペーサーがあります。

ワッシャー

ワッシャーは、通常ではネジ座面の母材への陥没を防止したり、ネジやナット類の緩み防止などを目的に使用される部品ですが、高精度を要求されない場合にはスペーサーとしても機能します。

先に触れましたように中空スペーサーの代用や、ネジスペーサーと組み合わせれば隙間の微調整が可能です。また、ネジで締結する部品の間に隙間が必要な場合に、部品とネジの間だけではなく、部品と部品の間にも、必要な隙間になる複数枚のワッシャーをはさめば、容易に隙間が作れます。

ホイールスペーサーを使うメリットとデメリット

ホイールスペーサー

ホイールスペーサーはスペーサーの中でも特によく耳にしますが、先にも触れました通り自動車部品のひとつです。

ホイールスペーサーには、純正のハブボルトをそのまま使用する薄いタイプと、純正のハブボルトでハブにスペーサーを固定した後に、スペーサーから出ているボルトにホイールを固定する、厚手タイプのワイドトレッドスペーサーの2つに分けることが出来ます。

以下ではホイールスペーサーを使うメリット、デメリットを解説します。
 

ホイールスペーサーを使うメリット

先に触れました通り、ホイールスペーサーは自動車のハブとタイヤホイールの間に取り付けて、ファッション性の向上やタイヤホイールの微調整をする部品です。

一般的にハブボルト(車種によってはホイールボルト)に通してハブとホイールの間に取り付けるだけの簡単な施工と、3mm~5mm程度の薄いものは1枚1,000円~2,000円程度で販売されている安価なものもあり、手軽に足回りだけでなく愛車全体がスタイリッシュに仕上がることが最大のメリットと言えます。

ホイールスペーサーは3mmほどのものから50mmを超えるものまで幅広くラインナップされています。取り付けると、スペーサーの厚み寸法分だけタイヤホイールが外側へオフセットされ、トレッド(左右の車輪間の距離)が広がりますので、コーナリング性能が向上します。

また、サスペンション周囲の構造的に、トレッドが広くなれば車高が下がるため、走行の安定性が向上します。

ホイールスペーサーを使うデメリット

最大のデメリットとしては、タイヤホイールを止めるナットが緩みやすくなることです。

ハブボルトにスペーサーを取り付けた後にタイヤホイールをナットで止めますので、純正のハブボルトのままではスペーサーの厚み寸法分ハブボルトが短くなり、ナットがボルトにねじ込まれる量が減ることが原因です。

ナットが緩むとスペーサーやタイヤホイールも緩みますので、走行中の振動などによりクラック(ひび割れ)が発生し、最悪の場合は破損してしまい、タイヤが外れて重大な事故につながる危険性があります。

このような事故を回避するためにも、薄手のホイールスペーサーを選択するか、ワイドトレッド対応の長いハブボルトへの交換をおすすめします。

また、タイヤホイールが車体外側へオフセットされますと、路面の段差などで車体が沈み込んだ場合に、タイヤの外側面とフェンダーの内側が干渉して、タイヤが傷つくことがあります。

タイヤの接地面(外周面)は耐摩耗性や耐衝撃性に優れていますが、側面は意外にもろく、繰り返し傷つくことで破損しやすくなり、パンクや走行中のバーストにつながる危険性もありますので、ホイールスペーサー取り付け後は、愛車の挙動や異音に注意しましょう。

繰り返しになりますが、ホイールスペーサーは、ばね下重量を増加させますので、ハンドリングへの影響(トレッドが広がるとハンドリングが重たくなったり、レスポンスが悪くなったりする場合があります)や少なからず燃費の低下につながることも、装着によるデメリットのひとつと言えるでしょう。
 

スペーサー選びのポイントや注意点

たくさんの種類があるホイールスペーサーですが、その中からご自身にあったものを選ぶ場合に、まず気を付けいただきたいことは、汎用品や安価品はリスクが高めになることです。

例えば、汎用品のひとつにマルチPCD(PCDはホイールのボルト穴の中心を結んだ円の直径を表し、国産車だけで5種類あります。マルチPCDはこれら全て、またはいくつかに対応可能なスペーサー)やハブ径の違いに対応させるために、取付穴を長穴に加工しているものがあります。

この構造ですと取り付けた時や走行中にスペーサーやタイヤホイールがずれてしまうことがあり、走行安定性が損なわれたり、走行中の振動発生につながります。

これを防ぐにためには、長穴加工ではなく、複数の穴を開けてマルチPCDに対応しているスペーサーを使用するか、ハブリング付きのスペーサーを選ぶことをおすすめします。

ハブリング付きのスペーサーであば、ハブの中心にあるリング状の突出部に合わせて取り付ければ中心がずれることを防げますので、安定性が損なわれるリスクの軽減につながります。

また、あまりにも安価なスペーサーには安いなりの理由があります。粗悪な素材や強度が低い材質が理由の場合には、安全性に問題が出る可能性が高くなります。
 

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まとめ

ネジスペーサー

この記事では産業機械などで使用される一般的なスペーサーの特徴や用途などや、自動車部品であるホイールスペーサーを使用するメリット、デメリット、選ぶ際のポイントや注意点などについて解説しました。

特にホイールスペーサーは正しい選択や取り付けを行わないと法令違反となったり、重大な事故につながる可能性がありますので、十分に検討されることをおすすめします。
 

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