キャッスルナットとは?規格や割りピンによる固定方法

キャッスルナットはナット頭部に深めの溝が掘られた形状のナットです。相手方のボルトに割りピンを通すための穴を開け、この穴と溝に割りピンを通して固定させることでナットの脱落防止と緩み止め効果を発揮します。ここではキャッスルナットについて解説します。

キャッスルナットとは?規格や割りピンによる固定方法のイメージ

目次

  1. 1キャッスルナットとは
  2. 2キャッスルナット使用方法
  3. 3キャッスルナットを使用するメリットデメリット
  4. 4まとめ

キャッスルナットとは

キャッスルナットとは、キャッスル(城)の名前が示す通り中世ヨーロッパの城の塔にも見える形をしたナットです。またその形状から溝付ナットや菊ナットという呼ばれ方もしています。このナットの歴史は古く、1963年に初めてJIS規格に規定されました。

用途は広く、機関車やオートバイ、戦車といった大型機械にも使われています。今回はキャッスルナットについて詳しく見ていきます。

キャッスルナットの特徴

キャッスルナットの特徴は、その形状にあります。ナット上部に溝が向かい合わせの場所に掘られていて、これを利用してナットの緩みと脱落を防止する効果を持たせます。

相手方のボルトにピン用貫通穴を開け、そこに入れた割りピンをキャッスルナットの溝部に嵌めてピン先を割ってナットの外周へ沿わせます。

割りピンにより物理的にボルトとナットを固定することで、ナットの脱落と緩み方向への回転が防げますので、高度な緩み止めや固定用のナットとして使われます。
 

キャッスルナットの用途

キャッスルナットは緩み止めと脱落防止に効果があるため、振動が激しい場所や機械内の駆動部などに多く使用されます。例えば航空機や戦車といった大型機械のエンジンフレームの保安箇所や産業機械の駆動部、自動車やバイクのステアリングや車輪部のサスペンションなどです。

また材質をチタンで制作することが可能なため、非磁性が必要な箇所や油やゴミが付着してはいけない宇宙分野や航空分野、医療や最先端産業機器にも利用されています。

キャッスルナットの規格

キャッスルナットの割りピン用の溝は規格により6箇所から12箇所掘られており、
JIS  B 1170に詳細な規定があります。ここでは形状を中心に簡単に解説していきます。

【1種】
溝部分が六角部に切られているタイプです。主に小径のナットに用いられます。
【2種】
溝部分が六角ナットの外側に飛び出しているタイプです。主に大径のナットに用いられます。
【高形】
ナットの高さがあるタイプです。
【低形】
ナットの高さが低いタイプです。

これらを組み合わせて規格の名称が決まります。また俗称で、1種を菊ナット、2種をキャッスルナット、これらの総称を溝ナットと呼んだりもします。

【1種高形】
ナットを取り付ける場所の高さに制限がなく、割りピンが外に出ても問題ない箇所に使います。
【1種低形】
ナットの高さを低く押さえるべき場所で、割りピンが外に出ても問題ない所に使います。
【2種高形】
ナットを取り付ける場所の高さに制限がなく、割りピンをなるべく外に出したくない場所に使います。最も一般的で、流通量の多いタイプです。サイズや材質も豊富にあります。
【2種低形】
ナットの高さを低く押さえるべき箇所で、割りピンをなるべく外に出したくない所に使います。
他にも3種、4種が規定されていますが、一般には流通していません。

材質は主に鉄製やステンレス製ですが、中にはチタン製もあります。

キャッスルナット使用方法

キャッスルナットの使用方法は以下のとおりです。

ピン用貫通穴が開けられているボルトに、ワッシャと共にキャッスルナットを下限トルクで締め付けます。位置を仮決めしたら、更に締め付け方向へ回転させて溝とピン用貫通穴の位置を合わせ、割りピンを差し込んだ後に先端を割ってピンを固定します。

キャッスルナットを使用するメリットデメリット

キャッスルナットはナットの脱落防止やゆるみ止め効果の目的で採用を検討されますが、メリットとデメリットがあります。それらを把握しておくことは、ナット選定にとても重要です。それぞれを解説します。

キャッスルナットを使用するメリット

キャッスルナットのメリットは、安定した緩み止め性能にあります。ボルトに開けられたピン用貫通穴に割りピンで物理的に固定されるため、他の方法に比べてナットの緩み方向への回転が抑制されます。万が一ナットが緩んだ時も、割りピンが最後の砦となりナットやワッシャの脱落防止効果を得られます。

また強度や材質などの詳細はJIS規格によって規定されているため、安心して採用する事ができます。キャッスルナットも割りピンも様々な材質で制作できるため、高温高圧の環境下でも耐えられます。材質をチタンにすることで、更に使用可能範囲を広げる事ができます。

キャッスルナットを使用するデメリット

キャッスルナットの最大のデメリットは、コストと加工性にあります。ボルトにピン用貫通穴を開けるための設計や加工、締め付けた後に割りピンを差し込むなどの工数によりコスト高になります。

また、呼び径が小さい場合や作業スペースが狭い場合などは割りピンを通しにくく、締め付け角度が制限される上に位置決めも融通が効きませんので、もし間違った場所にピン用貫通穴を開けてしまった場合は、ボルト自体の交換が必要になります。

キャッスルナットの使用上の注意点

キャッスルナットを締め付ける場合は、仮止めの後は必ず締め付け方向に回転させて溝と穴位置を合わせます。しっかりとした緩み止め効果を得るために、ナットを緩めて位置を合わせてはいけません。

また割りピンは何度も曲げ伸ばしすると折れてしまうので、メンテナンスのために一度外したら、その都度新品と交換することをお勧めします。使用中に割りピンが破断してしまうと、緩み止めはもちろん、脱落防止効果も失われてしまいます。

またピン用貫通穴をボルトの先端に開けすぎると、万が一緩み方向へ高い圧力が掛かった時にボルトが破壊されてしまう危険性があるため、適切なクリアランスが必要です。また、このボルト先端のクリアランスによって他の部品と干渉しないか確認する必要もあります。

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まとめ

キャッスルナットはナットの脱落防止効果や緩み止め効果が高く、構造が比較的簡単です。そのため、以前はよく使われていましたがコストや加工の手間がかかるため、最近では他の緩み止め用のナットに代替される傾向にあります。

しかし、その緩み止めの性能には定評があり、高い緩み止め効果や確実な固定が必要とされる場所にはよく使われています。

また高温高圧の環境下でも、とても力を発揮します。チタンなどの材質で製作が可能なため精密機器や薬液などの特殊な環境にも対応できます。使用する場所の状況に応じて選定しましょう。

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