2020年06月15日公開
2020年10月26日更新
ねじ材質と強度区分|アースねじなど
ねじの強度区分は材質のほか、熱処理や表面処理の方法によっても変わります。この記事では通電機能を備えたアースねじも含め、ねじの主な材質と強度区分、表面処理について解説。ねじの材質および表面処理の方法と強度の関係、アースねじに関心がある方は参考にしてください。
ねじの主な材質とは?
ねじの強度区分はJIS規格により定められています。ねじの強度を定める要素は材質と熱処理や表面処理の方法などです。まずはねじの材質にはどのようなものがあるのか、主な材質14種類について解説していきます。
1. ステンレス
ステンレスとはクロムやニッケルを含む鉄のこと。一般的なねじの材質です。サビやすい鉄に、鉄のサビを防ぐクロムやサビにくいニッケルが含まれるためサビにくいという特徴があります。
ISO(国際標準規格)ではクロム12%以上、JIS(日本産業規格)ではクロム10.5%以上と定められています。クロム18%・ニッケル8%を含むオーステナイト系「SUS304」が代表的。微弱な磁性はありますが、耐食性(サビにくさ)に優れています。
2. アルミ
アルミ(アルミニウム)には軽くて加工しやすい、熱や電気を通しやすい、非磁性、着色しやすい、比較的サビにくいという特徴があります。
ただアルミ単体では強度が低いため、一般的にはマグネシウムが主体の「5000系アルミ合金」、あるいは亜鉛とマグネシウムが主体の「7000系アルミ合金」として使われます。「7000系アルミ合金」は強度が高いものの、ややサビやすいです。
3. チタン
軽い・サビにくい・非磁性といった優れた特徴をもつチタン。金属アレルギーになりにくいことでも注目を集めています。
大まかに純チタン・耐蝕チタン・チタン合金の3種類があり、とくにチタン合金は強度が非常に高いという特徴があります。しかし全般的にチタンは熱伝導率が低いため加工が難しく、価格が高いところがデメリットです。
4. 銅
銅は全般的にサビにくい、熱伝導率・電気伝導率が高い、非磁性、変形しやすいため加工しやすいところがメリットです。強度が低い、柔らかいため変形しやすいところはデメリットです。
純銅以外に「銅+亜鉛」の黄銅、そのうち亜鉛が20%以上の真鍮、「銅+亜鉛+すず」のネーバル黄銅、「青銅(銅+すず)+りん」のりん青銅(燐青銅)といった銅合金もねじの材質として使用されます。
とくにりん青銅は一般的な銅の特徴に加え、強度が高く、バネ性・曲げ性・耐摩耗性にも優れています。
5. 塩ビ(PVC)
ステンレス・アルミ・チタン・銅は金属ですが、ねじの材質には非金属の合成樹脂のうち、熱硬化性樹脂ではなく熱可逆性樹脂(樹脂ねじ・プラスチックねじ)もあります。熱可逆性樹脂は大まかに次の3種類に分けられます。
- 汎用性プラスチック
- エンジニアリングプラスチック(エンプラ)
- スーパー(特殊)エンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)
塩ビ(PVC)は汎用性プラスチックの一種です。加工性・耐候性(気候による変化への耐性)・耐水性・耐薬品性・絶縁性・難燃性に優れているものの、有機溶剤や強酸には弱く、耐熱性・耐衝撃性は低いというデメリットがあります。
6. ポリプロピレン(PP)
ポリプロピレン(PP)も塩ビと同じく汎用性プラスチックの一種です。樹脂ねじの中でもとくに軽く、熱に非常に強いという特性があります。
高強度で変形しにくく、耐薬品性・耐摩耗性・絶縁性に優れていますが、靭性(粘り強さ)は低いです。吸水率・吸湿率が低く、耐加水分解性が高いという特徴もあります。
7. ナイロン
ナイロンとはポリアミド(PA)合成樹脂のこと。エンプラの一種です。軽い、非磁性・耐久性・耐薬品性・耐摩耗性・耐衝撃性・柔軟性・絶縁性に優れているという特徴があります。
8. レニー
レニーとは高強度ナイロンのこと。エンプラの一種です。非金属の樹脂ねじは、金属ねじと違ってサビない、腐食しない、非磁性・絶縁性に優れているという特徴があります。
しかし樹脂ねじは全般的に強度が低く、熱に弱い傾向にある点がデメリットです。ところがレニーは樹脂ねじにもかかわらず強度が非常に高いため、優れた金属代替材料の1つとして注目を集めています。
9. ポリアセタール(POM)
ポリアセタール(POM)はジュラコン(ポリプラスチック社の登録商標)という通称で呼ばれているエンプラの一種です。
強度が高く、曲げ強さ・耐摩擦性・耐衝撃性・吸振性・防音性・耐薬品性に優れているという特徴があります。家電や事務用品、自動車部品などに使用されています。
10. ポリカーボネート(PC)
樹脂ねじの中でもとくに耐衝撃性が高いエンプラがポリカーボネート(PC)です。非磁性で絶縁性が高いほか、透明性・強度・耐熱性・低温特性にも優れています。
ただし柔らかいため傷がつきやすく、透明性が損なわれやすいところがデメリットです。薬品耐久性・耐加水分解性もあまり高くありません。
11. テフロン(PTFE)
炭化水素の一種エチレンの誘導体テトラフルオロエチレン(TFE)が重合したものがテフロン(ポリテトラフルオロエチレン・PTFE)です。デュポン社の商品名やフッ素樹脂の総称としても知られています。耐熱性・絶縁性・耐薬品性・耐摩耗性に優れています。
ナイロンのポリアミド(PA)、レニー、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)は耐熱温度が100℃以上のエンプラでした。対してテフロンは耐熱温度が150℃以上のスーパーエンプラの一種です。
12. ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)はテフロンと同じく、スーパーエンプラの一種です。耐熱性・高温特性・耐薬品性・耐水性・非磁性・耐放射線性・耐加水分解性が非常に優れているという特徴があります。
13. ポリフェニレンサルファイド(PPS)
ポリフェニレンサルファイド(PPS)もスーパーエンプラの一種です。耐熱性・高温耐性・耐薬品性・強度・剛性(変形しにくさ)・耐摩耗性・非磁性・非粘着性が非常に優れています。
14. セラミック
セラミック(セラミックス)とは陶磁器・窯業製品をはじめ、無機焼結体(無機物を焼き固めたもの)の総称です。ガラス・セメント・石膏(せっこう)もセラミックの一種です。
ねじの材質としては主にアルミナ(酸化アルミニウム)やジルコニアが使われます。どちらも強度が高く、耐食性・耐熱性・断熱性・絶縁性・耐薬品性・耐摩耗性に優れています。
ねじの強度区分と表面処理
JIS規格によってねじの強度区分は次の10段階に定められています。
3.6 | 4.6 | 4.8 | 5.6 | 5.8 | 6.8 | 8.8 | 9.8 | 10.9 | 12.9 |
- 左の数字:呼び引っ張り強さ(×100N/mm2)
- 右の数字:「降伏点÷呼び引っ張り強さ」の小数点1位
ナットの強度区分は次の7段階です。
4 | 5 | 6 | 8 | 9 | 10 | 12 |
数字が小さいほど強度は低く、大きくなるほど強度は高まります。ねじの強度区分に大きく関わるのは材質です。ただし熱処理や表面処理の方法によっても違いが出てきます。
炭素鋼のボルトなどには「調質焼入れ」、タッピンねじなどには「浸炭焼入れ」という熱処理を行うことで必要な強度を保つことができます。表面処理と強度の関係については続いて19種類の方法を見ていきましょう。
1. 黒色酸化皮膜
表面に酸化被膜を作る黒染め処理です。耐食性が高まることによってサビにくくなり、強度を高めることができます。
2. パーカー処理
リン酸塩を使って表面に梨地の被膜を作る化成処理です。適しているのは塗装の前処理(下地)。耐候性の向上により強度が高まります。
3. ユニクロ(ユニクローム)
「電気亜鉛メッキ+光沢クロメート処理」のメッキ処理です。青みがかったシルバーの色調になり、硬度と耐摩耗性が高まります。
4. クロメート
「電気亜鉛メッキ+有色クロメート処理」の一般的なメッキ処理。緑っぽい金色になるため主な用途は装飾用です。
5. 亜鉛黒
「電気亜鉛メッキ+黒色クロメート処理」のメッキ処理です。耐食性の向上により強度が高まります。
6. 三価クロメート(三価ホワイト)
ユニクロ・クロメート・亜鉛黒などのクロメート処理は有害物質の六価クロムを含みます。その代わりに三価クロムを使ったメッキ処理です。強度を高めるのは浸食性の向上です。
7. 三価ブラック
三価クロメートと同じく、六価クロムの代わりに三価クロムを使ったメッキ処理です。浸食性の向上によって強度を高めます。
三価クロメートはユニクロと同じく「光沢クロメート処理」なので色調はシルバーです。三価ブラックは亜鉛黒と同じく「黒色クロメート処理」なので黒いという違いがあります。
8. クローム
「ニッケルメッキ+クロームメッキ」のメッキ処理。強度を高めるのは硬度・耐摩耗性の向上です。
9. ニッケル
銅メッキを下地に施すことが多い、ニッケルメッキ処理。光沢が出るため主に装飾用として使われます。「電気亜鉛メッキ+クロメート処理」より耐食性は低いです。
10. 黒ニッケル
「ニッケルメッキ+亜鉛ニッケル合金メッキ+ニス」のメッキ処理です。亜鉛ニッケル合金メッキの色調は黒で、変色を防止するためニスでコーティングします。ニッケルメッキと同じく耐食性は低いため主な用途は装飾用です。
11. スズコバルト
スズコバルト合金によるメッキ処理。量産しやすいため主にクロームメッキの代わりに使われます。耐食性はやや低いです。
12. ブロンズ
ブロンズとは青銅のこと。銅メッキを施した後に、薬品で黒く染めて研磨します。GBメッキ(銅古美)とも呼ばれ、主な用途は装飾用です。
13. 真鍮
真鍮とは亜鉛を20%以上含む黄銅のこと。「ニッケルメッキ+真鍮メッキ」のメッキ処理です。主に装飾用として使用されます。
14. ドブ
溶融した亜鉛に浸す溶融亜鉛メッキです。耐食性の向上により強度が高まります。
15. ラスパート
「金属亜鉛+化成皮膜+表面焼成」の表面処理。ラスパート社の登録商標です。耐食性・耐熱性の向上により強度が高まります。適しているのは屋外での使用です。
16. ディスゴ
「亜鉛末が主成分のベース塗料+樹脂が主成分のトップ塗料」による表面処理。強度を高めるのは耐食性・耐熱性・耐薬品性・耐候性・耐水素脆性(ぜいせい)の向上です。ディスゴもラスパート社の登録商標。クロムフリーのためラスパートの代わりに使われます。
17. ダクロタイズド
亜鉛が主成分の処理液ダクロディップに浸した後、約300℃で加熱する表面処理。NOFメタルコーティングス社(旧・日本ダクロシャムロック社)の登録商標です。耐食性・耐熱性・密着性・耐水素脆性の向上により強度が高まります。
18. ジオメット
亜鉛とアルミの金属フレークをケイ素系無機バインダーで結合した被膜による表面処理。NOFメタルコーティングス社の登録商標です。
耐食性・耐熱性・耐塩水性・耐複合腐食性・耐水素脆性の向上により強度が高まります。クロムフリーのためダクロタイズドの代わりに使われます。
19. アース
アースねじとは通電機能を備えたねじのことです。アースねじ頭部の裏に突起があり、アースねじを締めるだけで相手側の塗装やメッキなどの処理が施された表面層をはがすことができます。そのため相手側の素地とつながり、通電が可能になるという仕組みです。
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まとめ
ねじの材質と強度区分、表面処理やアースねじについて解説しました。ねじの主な材質は次の通りです。
金属 | ステンレス・アルミ・チタン・銅 |
汎用プラスチック | 塩ビ・ポリプロピレン |
エンプラ | ナイロン・レニー・ポリアセタール・ポリカーボネート |
スーパーエンプラ | テフロン・ポリエーテルエーテルケトン・ポリフェニレンサルファイド |
セラミック | アルミナ・ジルコニア |
ねじの強度区分はJISによりボルトが10段階、ナットが7段階に定められています。適した強度区分を保つため、材料だけでなく熱処理や表面処理の方法にも注意するようにしましょう。